●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.83 ●▲■
    発行日:2006年 7月18日(火)
 ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com


------------------< 目 次 >------------------

●▲■「原材料:窒素」?のビール
●▲■ナイトロジェネイティッド・ビア(窒素化ビール)とギネスビール
●▲■原材料表示のお国柄に関する一考察:
             原材料は書かなくても常識?
                   (text:喜多常夫)

ご紹介アイテム●1▲(英)BSL社の炭酸・窒素ガス混合機
ご紹介アイテム●2▲液中にガスを溶解させる「ストーン」
ご紹介アイテム●3▲(米)ツァームのエア測定器具

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何事につけ「マーケット二極化」とはよく言われるところ。

ビール系飲料においても、
低価格競争の「第三のビール」が激戦である一方、
最近とみに賑やかなのが「プレミアムビール」。

サッポロの「エビス」、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」、
キリンの「一番搾り無濾過」など
普通のビールより1本30円くらい高いセグメントである。

最近これに、アサヒの「プライムタイム」が加わった。
会社帰りのコンビニで実物を発見し、思わず購入。
早速飲んでみた感想は、
まろやか、バランスよし、泡がきめ細かい、、、

さすが大手だなあ、、、と感心しつつ缶を眺める。

青色ベースの、ビールらしからぬデザイン。
発売当初、青は売れないといわれながらも大ブレークした
ポカリスエットのパッケージデザインのエピソードを思い出した。

さらにしげしげ眺めると「原材料:麦芽、ホップ、窒素」とある。

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「原材料に窒素と書かれている!」、
とは、実は既にビール通の社員から聞いていた。

窒素はビールのみならず、
清酒、ワインにも利用拡大しているのは業界人の知るところだが、
「原材料:窒素」と表記するのはたいへん珍しいと思う。

アメリカのブリューパブでは稀ではあるが、メニューに、
「Nitrogenated Beer-ナイトロジェネイティッド・ビア」を載せている事があ
る。
「窒素化ビール」とでも訳したらいいだろうか。
「Nitro Mix-ナイトロ・ミックス」などと書かれている時もある。

泡もちが極端にいいのにたくさん飲めるので、好きなビールである。
個人的体験の範囲では、シアトルとかボストンとか、
なぜか北部の街のブリューパブに多いよう。

典型的には、
炭酸ガス溶存量を減らして、
代わりに窒素ガスを(非常に溶けにくいが)多く溶存させ、
さらには、グラスに注ぐ直前に窒素を強制的に吹き込んだりしてつくる。
ラガーにも使える技術だが、黒ビールやスタウトとの組み合わせが多い。

専門的になるが数字で言うと、以下の如し。
「普通のビール」:炭酸5.0-5.5 g/l(2.5-2.7 GV)、窒素1%v/v以下
「窒素化ビール」:炭酸2.5 g/l(1.3 GV)程度、窒素3-6%v/v

(件のプライムタイムは原材料:窒素、と表示はしているが、
酸化防止に主眼を置いて窒素を使用されているのだろう、
ビール液中の窒素溶存量はそれほど多くないようで、
いわゆる窒素化ビールの範疇ではないと思う。)

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さて、「窒素化ビール」。
飲んだことの無い方にこれを説明するのは難しいが、
ギネスドラフトみたいなビール、というのがわかり易い。
一昔前は専門店アイテムだったが、今やコンビニで入手できるので。

大体、ビールで窒素、というと真っ先に思い浮かぶのもギネスである。

(注:ギネスドラフトは、缶詰め時に液体窒素を入れる。
この液体窒素は気化して、
「酸化防止+泡のきめを細かく+内圧で缶に張りを持たせる」
の一石三鳥の役を果たしている。
さらにwidget-ウィジェットというボールが入っていて、
これが缶を開けて注ぐときに窒素を液中に吹き込む役目をする。)

冒頭、プライムタイムの原材料表示の話だったが、
窒素がたっぷり入っているギネスの缶の表示はどうであろうか。

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ギネスドラフトの缶(新デザイン、缶蓋202)の表示は:
 「ビール」
 「原材料:麦芽・ホップ・大麦」
 「アルコール分:約4.2%」
 「330mlあたり、エネルギー115.5kcal、たんぱく質0.924g、云々」

「ウィジェットという白いカプセルが入っていて、、、」という説明はあるが
「窒素」という単語は一言も出てこない。

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新デザイン、と書いたが、
つい去年(2005年)までのギネスは缶蓋サイズ204で、印刷も違った。
手元にある旧仕様の空き缶を見ると表示は次のとおり:
 「ビール」
 「原材料:麦芽・ホップ」
 「アルコール分:約4.2%」

ふ〜ん、「大麦」の記載が無い。
「エネルギーXXXkcal、云々」の表示も無い。
そして、旧仕様も「窒素」の記載はない。

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さて、ヘンなものを持っているようだが、
昔、イギリスとアメリカで飲んだギネスビールの空き缶が手元にある。
改めて表示を観察してみた。

イギリス仕様のギネスドラフトの英語表示は次のとおり:
 「ALC 4.1% VOL」 - アルコール分4.1体積%
 「CONTAINS BARLEY」 - 大麦含む

大麦含む、とだけ書いているがホップやモルトは書いていない。
驚くのは、BEER-ビール、という単語が、どこにも書いていないこと。
「妊娠中や授乳期の飲酒は云々」警告表示もない。
そして、「窒素」も書かれていない。

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アメリカバージョンのギネスドラフトの英語表示:
 「PASTEURIZED STOUT」
 「12 FLOZあたり、エネルギー126kcal、たんぱく質0.3g、云々」
 「妊娠中や授乳期の飲酒は云々、飲酒は運転や機械操作の能力を落とし云々」

こちらは、大麦を含め、原材料表示が全く無い。
さらに、何度見ても、アルコール度数表示すらないではないか!
(どこの州で購入した缶か忘れたが、州規制により異なるのかも。)
イギリス版にない「PASTEURIZED STOUT-熱処理スタウト」とあるが、
こちらも、BEER-ビール、という表記はない。

そして、「窒素」も書かれていない。

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食品一般に対しては、さまざまな表示が求められる欧米だが
酒類に関しては意外なほど日本的と表示が違う。

まずもって、製品にビールやワインと書いていないものがある。
フランスワインでも「vino-ワイン」という単語が
ラベルのどこにないものが多い。
ビールとかワインとかは、みりゃ分かる、ということか。

ワインは、フランスで売られている状態では、
アルコール度数と容量は記載されているものの、
原材料や、未成年の飲酒禁止なども書かれていないのが通例。

ワイン原料は葡萄だし、亜硫酸もたいてい入っている、
先ほどのギネスの例も、麦芽やホップなど書かなくても常識、ということか。
はたまた、日本のように次々新原料の製品が出てこない、からか。

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日本では税金とリンクした厳格な酒類の定義があるが故に、
「ビールではないがビールに似た飲料」(=発泡酒、第三のビール)
という、他国から理解してもらいにくいジャンルができるのかもしれない。

反論もあるとは思うが、恐れずに推測を述べれば、
もし日本が第二次大戦で窮乏を経験することなく、
アルコール添加技術が開発されなければ、
日本の清酒にも原材料表記など無かったのかもしれない。。。

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窒素からはじまって、最後は表示の話になった。

「表示」に関しては、彼我(ひが)の歴史・文化の差を見る思いである。
「窒素」に関しては、ビールはもちろん、
清酒・ワインに関してもさらに利用が広まると期待している。

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さて、情報紹介と、商品紹介です。
今回はメルマガ本文がらみのものです。


●▲■ 「情報紹介」編

当社は、窒素に関して
ビール、ワイン、清酒など全方位で多くのノウハウと経験を持っています。
窒素を生かした技術に取り組まれる場合はぜひご照会ください。
下記は窒素に関連した当社の資料のサンプルです。


widget-ウィジェットについては、本場イギリスにも資料があまり無いので、
常々不思議に思ってらっしゃるビール技術者の方も多いのでは?
今回新しくまとめた、ウィジェットの参考資料。
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/Gas/Widget_information.pdf


以前、秋田今野さんの「温古知新」に掲載していただいた拙文。
「窒素ガスのビールへの影響」
http://www.kitasangyo.com/Archive/N2Gas-for-Beer/N2Gas-for-Beer.htm


泡の大きさに関する窒素ガスの影響。
http://www.kitasangyo.com/Archive/Yamamoto-TC/Yamamoto-TC-4.html

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●▲■ 「商品ご紹介」編


●▲■ ご紹介アイテムその1:ROOTSディビジョン ●▲■
(英)BSL社の炭酸・窒素ガス混合機
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/AGM300.htm

窒素と炭酸ガスを任意の比率で混合可能。
ビール、ワイン、清酒の新技術開発ツールとして、
また新飲料の開発のためにも。


●▲■ ご紹介アイテムその2:ROOTSディビジョン ●▲■
液中に各種ガスを溶存させる「ストーン」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/CarbonatingStone.html

炭酸ガスや窒素ガスの吹き込みに。
(ナノバブル技術への応用もできないかと思案しています。
どなたか、よいアイデアはありませんか?)

●▲■ ご紹介アイテムその3:ROOTSディビジョン ●▲■
ツァームのエアテスター

http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/ZN_airtester.html


飲料のガス量測定のスタンダード器具。
エアテスターは、
エア量(窒素+酸素)を測る事を前提としていますが、
工夫して窒素の同定に使っている例もあると聞きます。

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