●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.93 ●▲■
    発行日:2007年 1月22日(月)
 ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com


------------------< 目 次 >------------------

●▲■「続・パリのB級日本レストランの考察」
  ●▲■「サケのグローバル化と、シャンパン・ビジネスモデル」
    ●▲■「一皿ずつ食べる文化」vs「ちょっとずつ色々食べる文化」

●▲■おまけ:長生きの秘訣 「鳴かぬなら、、、、、」
                           (text = 喜多常夫)


ご紹介情報●1▲「ガス入りのお酒」など、ガス関連情報の<eアカデミー>
ご紹介情報●2▲パリ、イタリア、台湾、上海など、酒情報の<アーカイブ>


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●▲■「続・パリのB級日本レストランの考察」

「パリは日本食ブームなのに、
サケ(日本酒)の需要に結びついてない」

前回のシーナ・エミリの寄稿、「サケ ウォッチング in Paris」では
そう結んでいました。この話を続けます。

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昨年暮れ、京都・伏見のあるお蔵(清酒メーカー)に行ったときのこと。
スーツ姿のフランス人男性の先客(見学者)がいて、
蔵元自らがちょうど案内するところでした。

それまでこの蔵の中を見せてもらったことがなかったので、
こりゃチャンス、と、私もフランス人と見学させてもらい、
最後には利き酒もご一緒させてもらいました。

濁り酒や貯蔵酒で有名なお蔵なのですが、
貯蔵酒に関する利き酒の感覚が、結構、日本人と違うなあ、
というのが印象的でした。

ところで、このフランス人は、
ジョルジュ・サンク(有名なパリの高級ホテル)の
チーフ・バーテンダー氏(!)だそうで、
なんと、この蔵元を見るために京都にやってきた、とのことでした。

ジャパニーズ・サケは、日本がフランスに売り込むだけではなく
フランスのほうからもアプローチしてきているんだ、
と、日本酒のグローバル化を目の当たりにした出来事でした。


パリのサケ需要はシーナの言うとおり、
日本レストランではいま一歩、かも知れませんが、
一方で、有名レストラン(フランス料理)や、ワインバーで、
吟醸酒や貯蔵酒、それにサケ・カクテルをメニューに加えている店がある、
という話はよく聞きます。

パリの日本酒需要を押し上げる量には至らないけれど、
日本料理と直接リンクしない新しいサケ需要も生まれつつあるようです。


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「この吟醸サケは、薫り高くコクもあるから、フレンチ料理に合わせて」
「サケ・カクテルで、今までにない味わいを」
という「多様化」も、グローバル化に欠かせないプロセスでしょう。

しかし、
「日本酒は日本料理と合わせて楽しんでもらう」ことが、
日本酒文化グローバル化の「本流」のように思います。


さて、そこで命題。
「パリに増加しているB級日本レストランでは、
韓国製や中国製のサケを置いている」と、シーナ・エミリが書いていましたが、
それはサケの人気を落としたり、
日本酒グローバル化の障害になるのでしょうか?

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先週の新聞にこんな記事が載っていました。

 「日本食レストランを名乗る店が600店にも上るパリで、
 正統派の日本料理店を選ぶ試みが始まった。

 ジェトロの後押しで、日仏の料理関係者や
 ジャーナリストでつくる「日本食レストラン価値向上委員会」が
 1月16日、「推奨日本食レストラン」50店を公表。
 (同委員会のウェブサイト http://www.cecj.fr/ 参照)

 覆面委員が店を訪れ、▽日本的な店舗や雰囲気
 ▽日本料理の有資格者の有無▽日本食としての質や多様性があるか
 ▽米・醤油・酒が日本製か、またはそれと同等の品質か
 などを点数化し、7割以上取得した店を「推奨日本食レストラン」とした。」

「酒が日本製か、または<それと同等の品質か>」、が微妙ですね。

パリに限らず、政府(農水省)は世界規模で認証制度に乗り出すようで、
海外の日本食レストランの認証制度を2007年度に導入するとのことです。
いわば、「これはホンモノ(A級)、これ以外はB級」、と区別する制度。

消費者のガイドラインとして業界や政府が「ホンモノ」認定をするのは、
必ずしもB級否定ではないと思いますが、
内心は、「ニセモノは目のカタキ」的思惑もあるでしょう。

B級日本レストランで日本的ではない日本食や
韓国製や中国製のサケを飲んで、
日本食、ジャパニーズ・サケは不味い、もう食べたくない、
と思ってしまうのを危惧することもあるでしょう。

日本で作ったものだけ「日本酒」と呼ばせよう、という話を聞きます。

韓国製でも中国製でもアメリカ製でも、サケはサケ、清酒は清酒ですが、
日本酒は日本で作ったものに限定、というのはそのとおりだと思います。
フランスのシャンパンしかシャンパンと呼ばせないように。


●▲■「サケのグローバル化と、シャンパン・ビジネスモデル」

「シャンパン」、という名称が使えるのは、
フランスのシャンパーニュ地方で作ったもので、かつ、
厳格な規則にのっとった収穫や作り方をしたものだけ、
というのは、業界の皆さんはご存知でしょう。

しかし、シャンパンのようなスパークリングワインを作りたい、
と思う情熱家は世界中にいて、
彼ら彼女らは、シャンパンを作る設備を購入して、
世界各地でスパークリングワインを作っています。

ただ、シャンパンをつくるには、
壜口のオリを吹き飛ばしたり、
一本ごとにリキュールを継ぎ足す特殊装置が必要で、
通常はフランスの専門メーカーから設備を買わねばできないのです。

日本でもそういった機械を導入して、
すばらしいシャンパンスタイルのスパークリングワインを作っている
ワイナリーがいくつかあります。


以下は、去年、フランスのシャンパン機械メーカーの人とのやり取りです。

― 質問 ―
 「ご本家のシャンパン製造業者は、
 たとえシャンパンと名乗らなくても、
 世界中でシャンパンに似た商品がでるのはイヤなんじゃないの?
 シャンパンの名前を使えなくしたように、
 シャンパン製造機も輸出禁止にせよと圧力をかけてきたりしないの?」

― 回答 ―
 「いや、むしろ、
 世界中にシャンパンのようなスパークリングワインが増えてほしいと、
 思っているメーカーが多い。裾野が広がる効果が大きい。
 それに、いくつかのシャンパン製造業者は、
 カリフォルニアやオーストラリアに子会社を作って、
 正式にはシャンパンと呼べないスパークリングワインを自分で作っている」

 「最近、インド(!)にシャンパン設備を輸出したんだけれど、
 インドではシャンパンに200%の関税がかかるので、
 お金持ちといえども飲んだことがない人がほとんどだ。

 それが、インド国内で生産されるようになって、
 たとえ安くはなくても富裕層に入手可能な値段で販売されれば、
 シャンパンに目覚め、シャンパンを愛する人たちが生まれる。

 その中から<いつか本物を飲みたい>と思う人が出てくる。
 それは限られたリッチな人で、ほんの一握りかもしれないが、
 将来、シャンパンのお客様となる。」

 「シャンパンはハイエンドのお客様をターゲットにする。
 そんなお客様の満足のために、
 シャンパンは業界を上げて、世界最高ブランドたる努力をしている。」


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うーん、そう来るか、
同じLVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー、高級ブランド会社)の中でも
バッグのルイ・ヴィトンは「似たものはダメ哲学」、だけれど、
シャンパンのモエ・シャンドンやヴーヴ・クリコ(これもLVMH傘下)は、
「似たものもいいじゃないか哲学」、ということか。。。

最初からA級レストランに入って高価な日本酒を飲むことは難しい。
B級が底辺拡大に貢献しているのは事実でしょう。

B級には功罪両面があります。
ある日突然ベトナム料理店が衣替えした「B級」日本レストランには、
日本的日本食が食べられない恨みがある一方、
安価に門戸を開き、日本食人口の底辺を広げる貢献があります。

同じように、
韓国製、中国製、アメリカ製、など入手しやすい価格のサケには
功罪両面があるでしょう。

確かに幻滅する人もいるかも知れません。
しかし、とにもかくも初めてのサケを体験し、
「次はもっと本格的な、もっと良い日本酒を飲んでみたい」
と思う人も出てくるでしょう。

紆余曲折を経てホンモノの日本酒に出会い、日本酒に目覚める、
そんなストーリーがあっても良いと思います。

一方で韓国製や中国製のサケの品質も上がってくるでしょう。
ひょっとすると彼らも、
協会酵母で山田錦大吟醸を作る日が来るかもしれません。

パリジャン・パリジェンヌが、ホンモノの日本酒を飲みたい、と思ったとき、
日本の日本酒が、それに応えられる「品質」はもちろん、
「圧倒的ブランド力」も持っていることが、必要条件になると思います。

●▲■「一皿ずつ食べる文化」vs「ちょっとずつ色々食べる文化」


少々話しが変わりますが、
好きなサケや焼酎の飲み方は、「居酒屋で飲むこと」

バーのように、食べ物はあまりとらずに酒中心、でなく、
レストランのように、食事が主でお酒が従、でもなく、その中間。

業界の合言葉、「美味しく適量を」には反するかもしれませんが、
個人的には
「食べ物は(美味しいものを)少しで結構、
でも、お酒はたっぷり欲しい、
少なくとも3合、調子がよければ4〜5合は飲みたいじゃあないか」
という性格なので、居酒屋スタイルが好きなのです。


ワインの場合でも、
お皿の順があるフランス料理と合わせるより、
スペインのタパスのようなおつまみ的料理で、フルボトル1本は飲みたい、
ほうです。単なる酒好き、なのかも知れませんが。


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西欧人は、「一皿ずつ食べる文化」、です。
彼らは、サラダの皿を平らげ、次にスープを飲み干し、メインの皿を食べ終わ
り、
と一皿ずつ片付けていきます。
朝食とか機内食で、2枚以上のお皿が出ている場合でも、
まず1枚を平らげてから次の皿にかかる、という律儀(?)な人が多いように思
いま
す。

一方、日本人、アジア人は、
「ちょっとずつ色々食べる文化」で、
沢山皿を並べておいて、好きなものを順序かまわず少しずつ食べる、
これは居酒屋の楽しみに通じるし、
サケを楽しく、そして「たくさん」飲めるスタイルの根本だと思います。

アングロサクソン系もラテン系も「一皿ずつ食べる文化」ですが、
特にアルコールを飲みながら食べるシチュエーションでは、
アメリカ人や英国人は、より「一皿ずつ食べる文化」的で、
フランスやスペイン・イタリアなどラテン民族のほうが、
比較的「ちょっとずつ色々食べる文化」要素を持っているように思います。

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ニューヨークやサンフランシスコにはサケ・バーがありますが、
パリのB級日本レストランのほうが、
日本の居酒屋に通じる要素を秘めているように感じます。

「日本レストランで日本食とともに日本酒」、も良いけれど、
「居酒屋スタイルで、少しづつ食べ、大いに日本酒を楽しむ」、
というスタイルは、
日本酒文化を発信する戦略として、面白いと思うのですが。


パリに、日本の大手居酒屋チェーンがそのまま上陸したら、
案外流行るのではないか、と思います。

でも、それを覆面委員が訪れたら、
「正当な日本レストラン」とみなされず、
B級日本レストラン扱いになるかもしれない、と思ったりもしますね。

●▲■おまけ:長生きの秘訣 「鳴かぬなら、、、、、」


「飲まぬなら、飲ませてみよう」「飲まぬなら、飲むまで待とう」

こんな文を、前回メルマガでシーナが書いていました。
最後に、本論と関係ないのですが、ある人に聞いた、長生きの秘訣。

「鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス」(信長)
「鳴かぬなら、鳴かせてみよう、ホトトギス」(秀吉)
「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス」(家康)

短気だった信長は40歳代で死に、
秀吉は60歳代で亡くなり、
忍耐強かった家康は、一番長く70歳代まで生きた、ということです。

ところが、「鳴かぬなら、鳴かぬのもよし」
と喝破した人がいたそうで、90歳以上長生きした、という話。

こういったのは松下幸之助さんで、
商売の心得として、そんなことを言ったそう。含蓄深い。

案外こんな心境に達したほうが、
日本酒のグローバル化も、
それに、仕事も人生も、うまくいくのかもしれない、
と最近思ったりするのですが、単に歳をとった、ということでしょうか。。。

                            (text = 喜多常
夫)

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さて、今回は当社のオリジナル情報の紹介です。


●▲■ ご紹介情報その1 ●▲■
「ガス入りのお酒」など、ガス関連情報の<eアカデミー>
http://www.kitasangyo.com/Archive/Gas/Gas.htm

ビールやお酒の炭酸ガスや窒素ガス関連情報を集めたサイトです。
吟醸酒の微炭酸入り、などは、
結構外国マーケットにアピールしそうに思います。


●▲■ ご紹介情報その2 ●▲■
パリ、イタリア、台湾、上海など、酒情報の<アーカイブ>
http://www.kitasangyo.com/Archive/hakariuri.htm

サケ、ビール、ワイン、などの実地体験レポート。
写真中心。
リラックスしてアルコール飲料文化を考えるツールにどうぞ。


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