●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.131 ●▲■
     発行日:2009年 9月19日(土)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■(続)お酒王冠の蘊蓄(うんちく)

 ■●お酒王冠・蘊蓄その3:「防腐剤含有?」

▲「サリチル酸の90年」「三増酒の60年」「紙パックの30年」
▲「発泡酒の15年」「第三のビールの5年」
▲ 民主党政権でみんなで一斉に「や〜めた」にできないか?

               (text = 喜多常夫)

 

ご紹介アイテム●1▲ザルキンのキャッパー
ご紹介アイテム●2▲各種デザインの汎用王冠・キャップ
ご紹介アイテム●3▲アーカイブ資料「韓国ソウル、サケ事情」

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8月末のメルマガで、
1930-1980年のお酒の王冠の「銅版」を県別に展示した、

 「酒(サケ)蓋(フタ)ミュージアム
          Museo Vetulus Sak? Futa」

のオープンをお知らせしました。

オープン時点では関西以北を公開していましたが、
このたび、中国・四国・九州についても公開の運びとなりました。

http://www.kitasangyo.com/museo/museo.html

 

「酒蓋ミュージアム」オープンのメルマガでは、
お酒王冠・蘊蓄として2題、
「クイズ、社名の変遷」「TAX PAID RYUKYU(琉球)」
を書いていました。

今回はその続編。

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 ■●お酒王冠・蘊蓄その3:「防腐剤含有?」

「お酒王冠・銅版ミュージアム」の展示品を詳しく見ると、
多くはありませんが、

 「防腐剤含有」
  「合成保存料含有」
  「合成保存料規定量以下含有」

などと印刷しているものがあります。

清酒にも、ワインのように「亜硫酸」でも入っていたのか?

 

いえいえ、かつて、
清酒には「サリチル酸」という防腐剤が入っていたのです。

調べてみるとそれほど昔の話ではなく、
今から40年前の1969年まで使われていたそうなので、
覚えている読者もいるのではないでしょうか。

王冠に表示してあるブランドの名誉のために書きますが、
表示しているブランドだけでなく、ほとんどの清酒に、
サリチル酸は使用されていたそうです。

以下はその調査報告。

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防腐剤「サリチル酸」(C6H4(OH)COOH)は、
  明治12年(1879年)から飲食物の、
  明治13年(1880年)から酒の防腐用として用いられた。
  が、1961年にWHOなどがサリチル酸の食品添加禁止を勧告。
  日本の清酒は、その後8年かかって、
  ようやく昭和44年(1969年)に添加禁止となった。

甘味料「チクロ」(C6H12NNaO3S)の名前は、
  ご存じの方も多いと思います。
  合成甘味料として食品やお菓子に使われていたけれど、
  FDAに発癌性が指摘され、同じ1969年に使用禁止となる。
  (ただし、発癌性を否定する研究結果もあり、
  EU圏、カナダ、中国では今も認可されている。)

1969年当時、サリチル酸とチクロは、
セットになって大きな社会問題になったのです。
(筆者は当時中学生でしたが、この騒ぎを覚えています。)

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江戸時代から明治初期にかけては、
木桶(殺菌が難しい)が使われていたうえ、
殺菌理論も確立されていないので、
夏になるとどの酒蔵でも貯蔵酒の火落ちが多発したそう。

蔵元の経営上の要請はもちろん、
日本政府も、酒税保全のために酒の防腐技術をほしかった。
(明治時代は税金の中で酒税の比重がとても高かった。
それに、清酒産業自体がとても大きな産業で、
明治7年(1874年)で、織物に次ぐ日本第2位の産業、
明治33年(1900年)でも、織物、製糸に次ぐ第3位だった。)

明治12年(1879年)頃、東大の2人の御雇い教師、
医学部のコルシェルト(Korscheltドイツ人)と、
理学部のアトキンソン(Atkinsonイギリス人)とで、
食品や酒の防腐技術について論争があったそう。

 「火入れしっかりやれ」がアトキンソン説。
  「サリチル酸使え」がコルシェルト説。

 

 

ドイツとイギリスが仲が悪いのは想像つきますね。

このころ、ヨーロッパでは、
サリチル酸がワインやビールの防腐剤として注目されていた。
(因みに、当時サリチル酸はドイツ(バイエル社)が製造!)

結局、日本政府はコルシェルト説を採用。
明治13年(1880年)に
「一石当たり十二匁」(1KL当り250g)のサリチル酸使用が認められた。
(これは、ヨーロッパで添加されていた量よりどうも多いようです。)

明治時代には、
1年1石以内の自家用醸造を容認していた時期もあり、
小規模な清酒や濁酒の醸造場が多数あって、
そんな醸造所にも手軽に腐造を防ぐ手段として
サリチル酸が広まったそうです。

使われだして10年ほどのち、
1880年代後半にはすでにフランスで、
サリチル酸は人体に危害ありとして、食品添加が禁止された。
日本にもそのことが伝えられ明治36年(1905年)に、
飲食物防腐剤取締規則でサリチル酸の飲食物への添加を禁止した。

しかし、酒だけ(!)は業界の要望で例外措置となり、
先述の通り、1961年のWHO禁止勧告のさらに8年後の、
昭和44年(1969年)まで使われ続けた。

明治・大正・昭和と、
清酒にはサリチル酸が90年近く用いられたことになる。

 

余談ながら、サリチル酸は、
かつてアスピリンが出るまでは鎮痛薬として使われ、
今ではイボをとる薬に使われているそう。
(「いぼころり」の主成分。サリチル酸は皮膚を腐食して、
めくれ易くする。。。。。チョット、コワイ)

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アトキンソンの名前は清酒業界ではご存じの方も多いと思いますが、
明治時代に日本酒の火入れを見て、
「日本ではパスツール以前に低温殺菌を使っていた」といった人です。

明治14年(1881年)に、日本酒の作り方を科学的に解説した、
「The Chemistry of Sake Brewing」という本を
東大から出版している。

 

余談ながら、
この本は今やインターネットで全92ページが読めます。
http://brewery.org/brewery/library/chmsk_RA.html

アトキンソンさんは伊丹、西宮で調査したらしく、

 Konishi Shinyemonさん(小西新衛門)の凱歌印、AL度数12.15度
  Tatsuma Kijiroさん(辰馬喜十郎)の弘明一印、AL度数11.00度

などが出てくる。(77ページ、スペリングはママ)

 

温度計のない時代、火入れ温度の管理は、
  「杜氏が酒の表面に「の」の字がやっと書ける熱さ」
という件(くだり)は有名ですが、

英文では「手を3回つけられる熱さ」(76ページ)
  a workman can just dip his hand three times
  in succession without feeling much inconvenience
となっています。
(「の」の字は、3画風に書くので、3回か)

コルシェルトの推進するサリチル酸への批判も書いてある。
コルシェルトのことを
Prof. Korscheltではなく、Mr. Korscheltと記しているのが面白い。

 

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「防腐剤なし」の清酒を早期に確立したのは月桂冠さんで、
禁止となる昭和44年(1969年)の半世紀以上前、
明治44年(1911年)に、
「壜詰め」の「防腐剤入らず」の清酒を市販したそうです。

木桶の時代に火落ち菌をコントロールするのは
至難の技だったろうと思います。

当時一般的だった樽入り販売でなく、
壜詰め販売に変えたことも大きい。

小売店が店頭で量り売りしていた時代に、
蔵元直詰め壜詰めで、封緘紙付きに替えたのは
流通システムも変えた、画期的なお酒だったと思います。

 

多くの酒造メーカーがサリチル酸を使わなくなったのは、
禁止された、まさに昭和44年(1969年)で、
国税庁が「サリチル酸を使用しない清酒の貯蔵と出荷方法」を通達し、
醸造研究所も「炭素でサリチル酸を除去する方法」を公開したので、
中小業者も対応ができたそうです。

 

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1969年のサリチル酸禁止とは直接の関係はないでしょうが、
その後1970年代前半は清酒の需要は大きく伸びた。

その伸びに隠れて忘れ去られようとしていますが、
  「サリチル酸の90年」(1880〜1969)
は、
  「三増酒の60年」(1944頃〜2006)
  「安売り紙パックの30年」(1980頃〜現在進行形)

とならぶ、清酒産業の悔恨ではないでしょうか。

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似た表現をビール業界について言えば、

 「発泡酒の15年」(1994〜現在進行形)
  「第三のビールの5年」(2004〜現在進行形)

が、あげられると思います。

 

因みに、
清酒の「三増酒」や「合成清酒」は
戦前〜戦後の原料不足に端を発して開発されたわけですが、

ビールでも戦争中、大麦や米の供給不足に対応すべく、
大日本麦酒(アサヒ、サッポロの前身)などが
大麦使用量を減らしたビール、または使用しない「合成麦酒」
(今の「発泡酒」「第三のビール」的なもの)を開発していたそう。

戦後、ビール風発泡酒で参入した企業もあったそうですが、
ビール業界大手は賢明にもこれらを駆逐し、
半世紀ぐらい「発泡酒」「第三のビール」に参入するものはなかった。

それが、今から15年ほど前になって、
寝た子を起こしてしまった体に見えます。

「発泡酒」「第三のビール」の技術が素晴らしいもので、
「より安い価格」こそが2009年のトレンドだとは分かっていても、
歴史的視点でみると
個人的には日本ビール産業の悔恨ではないかと危惧します。

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「それぞれの時代では正しい選択が、
歴史的視点では逆評価となる」
とうのは、歴史の常。誰も批判できません。

 

しかし筆者は、上で述べた「現在進行形」の3つ、すなわち

 「安売り紙パック清酒」
  「発泡酒」
  「第三のビール」

を、みんなで一斉に「や〜めた」と言って、
やめてしまうのがいいのではないかと思います。

民主党政権でどんな酒税の方針が出てくるか知りませんが、
最小限のダメージで方向転換をする
絶好のチャンスではないでしょうか!?

「お酒王冠・蘊蓄」から相当脱線しました。
門外漢が限られた見識で語る失礼の段、乞許。

 (参考文献、
   wikipedia
   栗山一秀「清酒の文明性と文化性の再構築」
   http://www.sakebunka.co.jp/archive/20kuriyama/20kuriyama01.htm
   青木隆浩「薩?先生の飲んだ日本酒を考える」
   http://www.hosei.ac.jp/fujimi/riim/img/img_res/WPNo.46_aoki.pdf
   アトキンソン「The Chemistry of Sake Brewing」
   http://brewery.org/brewery/library/chmsk_RA.html

  なお、日本語Wikipediaには、
   「酒の防腐剤として認められたのは、明治36年(1903年)」
   とあるが、多分、「明治13年(1880年)」が正しい。)

               (text = 喜多常夫)

 

 

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さて、きた産業の商品の紹介です。

 

●▲■ ご紹介アイテムその1:ROOTSディビジョン ●▲■

 ザルキンのキャッパー
  http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Zalkin_brochure.pdf

フランス、ザルキン社のキャッピングマシンを販売しています。
高速機からマニュアル機まで、既存機のオーバーホールも承ります。

こんな、1本立ての半自動キャッパーもあります。
  http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Zalkin_TM_3.pdf

 

 

 

●▲■ ご紹介アイテムその2:KKディビジョン ●▲■

 各種デザインの汎用王冠・キャップ
  http://www.kitasangyo.com/Products/ready_made_closure.htm

「蔵元直詰」「直詰封緘」「清酒」「本格焼酎」「泡盛」、、、
など、各種の表示

「黒無地」「赤無地」「金無地」「白無地」「青無地」、、、
など、各種カラー

一升壜用王冠、PPキャップ、広口キャップ、地ビール用王冠、、、
など、各種品種

を取り揃えています。

ケース単位の出荷が可能。資材在庫の圧縮に。

 

 

●▲■ ご紹介アイテムその3:<アーカイブ資料> ●▲■

 「韓国ソウル、サケ事情」
  http://www.kitasangyo.com/Archive/hakariuri.htm

ソウルのサケ小売価格はどうなっているのか?
ソウルのサケ事情の写真資料です。

 

 

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