●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.155 ●▲■
     発行日:2011年6月27日(月)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

「サケの国際化」(その2)

●▲■ノルウェーが世界で10番目のサケ生産国に
●▲■カナダに2軒目のサケ・ブルワリー開業
●▲■英語版「日本酒」(秋山裕一・著、井上喬・訳)

                  (text = 喜多常夫)

アーカイブ資料●▲ノルウェー産を含め「10カ国の清酒を飲む」

ご紹介YouTube動画●1▲ビール缶詰機「SMB ROOTS 6L-3S」
ご紹介YouTube動画●2▲ワイン樽洗浄機「新型H.S.HD FLEX」
ご紹介YouTube動画●3▲高ガス含有の清酒・焼酎の製造/充填機
                  「BF IV」と「TAN3 ROBO」

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前回メルマガ(「サケの国際化」その1:2010年の輸出実績データ)
から随分間があきましたが、
引き続き、「サケの国際化」の話題。

 

  ●▲■ノルウェーが世界で10番目のサケ生産国に

雑誌やウェブで紹介されたのでご存知の方もあると思いますが、
昨年、2010年8月頃から、
ノルウェーでサケ(清酒)を造り始めました。
醸造しているのは日本人でなく、ノルウェー人。

アジア、南北アメリカ、パシフィックの国々では
すでに清酒がつくられているけれど、
ヨーロッパでの清酒商業生産は、
人類悠久の歴史上、初!

日本以外で清酒を生産している国は、
これで10カ国となりました。

 

海外の清酒生産国10カ国について、
「一番古い清酒メーカーの生産開始年」
の年代順に記すと以下のようになります。

  1.ブラジル
    1935年:東山農産加工(「東麒麟」)

  2.韓国
    1945年:ロッテ酒造BG(「白花寿福」「清河」「雪花」など)
    (清酒事業は、ロッテ←斗山←白花と引き継がれた。
     1945年−終戦の年−は、白花の創業年。
     白花の前身の日本人酒造会社まで考えると1915年が清酒製造開始)

  3.アメリカ
    1979年:大関USA
     (米国宝酒造の持っている「宝正宗」ブランドは元来、
      ホノルル酒造のもので、これは1908年が清酒製造開始)

  4.中国
    1994年:天津中谷酒造有限公司(「朝香」)
     (中国についてはどこが一番早いのか正確な情報がない。
      1994年以前に清酒製造を開始したブランドがあるかも。)

  5.オーストラリア
    1995年:サンマサムネ社(「豪酒」)

  6.タイ
    1995年:コスモス社(「忍」)

  7.ベトナム
    1996年:フエフーズ社(「越の一」)

  8.台湾
    1997年:TTL−台湾酒タバコ有限公司(「玉泉清酒」)
     (1997年は、1973年から中断した清酒製造を「再開」した年。
      TTLの前身は日本の台湾専売局で、これは1922年に清酒製造。
      台湾専売局の前身の民営会社まで考えると1900年ごろ開始)

  9.カナダ
    2008年:アーテザン・サケ・メーカー(「OSAKE」)

  10.ノルウェー
    2010年:ヌグネ・オ(「裸島」)

以上は、
「現在、清酒を生産しているブランド」の生産開始年であって、
「戦前・戦中に清酒生産したが、今はないブランド」を含めると、
韓国、台湾、中国、ブラジルなどはもっと古い年代となります。

樺太(現在ロシア領)、北朝鮮、ビルマ、サイパンなどでも、
戦前・戦中は清酒や合成清酒がつくられていました。

ある意味、第二次世界大戦前に
「サケの国際化」のひとつのピークがあったことが判ります。

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話をノルウェーに戻すと、
ヌグネ・オ社は、
オスロの南西200kmくらいのグリムスタという町にある、
マイクロ・ビア・ブルワリー。
http://www.nogne-o.com/

 

「ヌグネ・オ」「N?gne ?」はイプセンの詩の引用で、
ノルウェー語またはデンマーク語で
N?gneがNaked またはNude、?がIslandの意。

したがって訳すと「裸島(ハダカジマ)」となり、
清酒のボトルには
漢字で「裸島」と書かれたラベルが貼っていあります。

原料米は北海道産(!)、酵母と麹も日本製、
山廃仕込み(!!)だそうです。
(因みに、協会酵母7号(真澄酵母)のビールも製品化)

ノルウェー清酒「裸島」は、
日本でも買うことができるので取り寄せて飲んでみました。

 

味わいは、、、
「日本人が目指す品質とは、目指すベクトルが違うなあ」
、、、というのが感想。

タイプが似てる、と思ったのは「アメリカ産清酒」、
または、
一度飲ましてもらった「アラン・デュカスの清酒」。
(注:アラン・デュカスは世界的に著名なフランス料理シェフ)

酸味のバランス感覚が違うのか、、、
西欧人の味覚解釈による旨いサケ、ということになるのでしょう。

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偶々、手元に多くの外国産清酒があるので、
並べて飲み比べる図、を撮ってもらいました。

●▲■アーカイブ資料
  ノルウェー産を含め「10カ国の清酒を飲む」
  http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/10_countries_sake.pdf

 

撮った写真を見ると、ちょっとヤリスギ、、、
(地元、大阪弁で言うとイチビリ)
っていう感じで、少々忸怩(じくじ)の思い、ですが、
10カ国分のサケが並ぶのは極めて珍しいと思うので
アーカイブ資料に収録しておきました。

(個人的には、この10カ国の清酒のなかで、
台湾の「霧峰郷農會酒荘」が白眉と思いました。
酸味のバランスが、日本人の感性に合う。)

 

 

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  ●▲■カナダに2軒目のサケ・ブルワリー開業

 

ビールでは、
「マイクロ・ビア・ブルワリー」、
「ブルワリー・レストラン」
というコンセプトは、
いまや世界中で展開されるビジネスモデル。

実は清酒でも
「マイクロ・サケ・ブルワリー」、
「サケ・ブルワリー・レストラン」
が世界で広がりつつあります。

今年、2011年4月に、
カナダのトロントにオープンした、
「オンタリオ・サケ・ブルーイング・カンパニー」も、その一つ。
http://ontariosake.com

 

場所は、Distillery Districtという、
ウイスキー蒸留所跡地を再開発した、
ダウンタウンのショッピング街の中。

清酒ブランド名は「泉」で、純米酒。
オーナーはカナダ人。
テースティングバーはあるけれど、
レストラン併設ではなくて、
300mlと1.8lの壜詰の「小売り」のお店だそうです。

ホームページには
長野の宮坂醸造さんの協力があったこと、
日本の醸造協会にも加盟していること、
などが書かれています。

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都会型の「マイクロ・サケ・ブルワリー」というコンセプトは
黄桜さんが東京・お台場に作られた
「蘂(はなしべ)」がその嚆矢(こうし)でしょう。

このマイクロ・サケ・ブルワリーは
むしろ国外で広がりを見せていて、現在5カ所あります。

  1.カナダ・バンクーバー
    2008年:アーテザン・サケ・メーカー(「OSAKE」)
    (杜氏:日本人)

  2.アメリカ・ミネソタ
    2008年:基・居酒屋(「moto-i」)
    (杜氏:アメリカ人)

  3.台湾・台中
    2008年:霧峰郷農會酒荘(「初霧」)
    (杜氏:台湾人)

  4.ノルウェー・グリムスタ
    2010年:ヌグネ・オ(「裸島」)
    (杜氏:ノルウェー人)

  5.カナダ・トロント
    2011年:オンタリオ・サケ・ブルーイング・カンパニー(「泉」)
    (杜氏:日本人)

バンクーバー(ブリティッシュコロンビア州=英語圏)、
トロント(オンタリオ州=英語圏)と、東進していますね。
もし次に、東隣のケベック州にできればフランス語圏。
さらにサケの国際化が進むなあ、と思います。
(個人的には「フランス文化とサケはとてもマッチする」と思うので)

他にもマイクロ・サケ・ブルワリーが、
アメリカやヨーロッパで検討されていること、
また、
既存の海外清酒生産工場の拡張計画や、
資本構成(出資者)変更の話題も、
風の便りに聞きます。

「海外生産の広がり」という切り口の「サケの国際化」は
どんどん進んでいくのでしょう。

 

 

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  ●▲■英語版「日本酒」(秋山裕一・著、井上喬・訳)

「サケの国際化」は、
1.「海外消費量の増大」が基本で、それに伴って
2.「海外生産の広がり」もありますが、他に
3.「サケの英語文献・英語発信」という切り口もあります。

 

近年の著作で、
とても良い「サケの英語文献」だなあと思っていたのは、
イギリス人、フィリップ・ハーパーさんの著作
「The Book of Sake」(定価\2,800)でした。

うまくまとまっていて、写真もきれいで、
外国人にサケ全般を知ってもらうのに好適の本。

(ハーパーさんには南部杜氏の勉強会でお会いしたことがあって、
現在、京都の木下酒造さんの杜氏だそうです。
「英国人杜氏」ということも、大変な「サケの国際化」ですね。)

 

しかしこの度、
岩波新書のロングセラー「日本酒」(秋山裕一著)の
英語版「SAKE」(定価\4,500)が醸造協会から出版されました。

訳出はビールの技術者、井上喬さん。
(なぜ、ビール技術者が清酒の本か、というのは
醸造協会誌2011年1月号に出ています。)

日本人の、
しかも、斯界の権威による著作・訳出というのは
サケの英語発信としては画期的出来事だといえます。

 

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そもそも「清酒」が英語で本格的に紹介された初の文献は
130年前に出された、
「The Chemistry Of Sake-brewing」 (1881年、明治14年)
ではないでしょうか。

明治初期、1870年代から1880年代にかけて、
東京大学などで化学を教えた、お雇い外国人教師、
アトキンソン (Robert William Atkinson)の著作。

欧米の低温殺菌(パストライズ)に当たる「火入れ」が
古くから日本で使われていたことを紹介したことで有名。

なお、
なんと!この本はインターネットで全文が読めます。
http://www.brewery.org/library/sake/cover.htm

 

「The Chemistry Of Sake-brewing」
の内容(目次)は以下の如し。

 Part I: Koji
   Chapter 1: Rice
   Chapter 2: Preparation of Koji
   Chapter 3: Active Properties
   Chapter 4: Action of Koji Extract Upon Some Carbohydrates
   Chapter 5: Action of Koji Extract Upon Gelatinized Starch

 Part II: Sake Brewing
   Chapter 6: Preparation of Moto
   Chapter 7: The Principal Process
   Chapter 8: Fermentation of the Mash
   Chapter 9: Filtration of Sake and Yield of Alcohol
   Chapter 10: Preservation of Sake
   Chapter 11: Shochu and Mirin

う〜ん、よくまとまっていますね。

10章と11章には、130年前の
   (伊丹の)白雪
   (西宮の)辰馬喜十郎
   (鞆の浦の)保命酒
等の分析結果なども収録されています。

 

一方、その130年後に英語出版された「SAKE」はこんな具合。
(アトキンソンとの対比のため、醗酵に関する章のみ詳細目次を記載。
なお、以下では略していますが、
本書ではSakeではなくSak?とアクサン記号をつけています。)

 Chapter I: An Overview of Sake: Present and Past
  Chapter II: Principles of Sake Brewing
    The Sake Brewing Process
    Rice Suitable for Sake Brewing
    Koji Making
    Yeast and Seed Mash
    Moromi, the Main Mash
    Filtration and Pasteurization
  Chapter III: The Winders of Sake Brewing
    Is the Quality of Water Essential?
    The Science of Rice Steaming
    The Method of Seed Cultivation
      -The Mystery of The Traditional Method
    The Wonder of Foam Head Formation during Fermentation
    Hiochi Acid
    Ginjo-shu Brewing
  Chapter IV The Amazing Abilities of Koji
    Contributions of Dr. Takamine to Koji Science
      and Its Application
    Studies on Koji Fungi
  Chapter V: Origins of Sake
  Chapter VI: The People Involved in Sake Brewing

目次を見ても、
いままでの英語文献ではなかなか見なかった
清酒技術の紹介となっていることが分かります。

第4章のDr. Takamine(高峰譲吉)のところでは、
1886年特許出願のフラッシュ・パストライザーの紹介などもあり、
科学史の視点からも興味深い内容です。

清酒に関する用語、表現を英語でどういうか、
というときの絶好の参考書にもなります。

最近はサケの英語インターネット情報があふれているので、
紙の文献を見ない人が多いかもしれませんが、
きちんとした英語の書籍が発行されることは、
「サケの国際化」、さらには、
サケだけでなく、
「日本の醸造技術の国際化」にも大いに貢献すると思います。

 

いつの日か、
フランス語(!)でも「SAKE」が出版され、
また、
秋山裕一版「日本酒」(1994年初版)と
坂口謹一郎版「日本の酒」(1964年初版、2007年岩波文庫で再版)が
英語で読み比べ(!)できるような日が、
やってくることを願います。

                 (text=喜多常夫)

 

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さて、商品の紹介です。

 

●▲■ ご紹介YouTube動画 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
  ビール缶詰機「SMB ROOTS 6L-3S」@FOOMA2011
   http://www.youtube.com/watch?v=k_7OpXSiyg0

350mlアルミ缶で1000〜1300缶/時の能力。
独SMB社の6ヘッド充填+日ROOTSの3ヘッド巻締の
日独合作「セミモノブロック」コンセプト。

なお、カタログはこちら↓
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/SMB_ROOTS_6L3S.pdf

地ビールは缶が売れ筋!
缶の拡販、原価低減に好適な設備!

 

 

●▲■ ご紹介YouTube動画 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
  ワイン樽洗浄機「MOOG新型H.S.HD FLEX」@FOOMA2011
   http://www.youtube.com/watch?v=y-1yaGXIEb0 &feature=related

スイスMOOG製「ワイン樽洗浄機」の
最新モデル「HD」(ハイドロモーター)仕様。電源不要です!

カタログはこちら↓
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/brewing/Rothojet_ed07_1_WOP.pdf

 

なお、電源必要の従来機「「MOOG樽洗浄機H.S.」の動画はこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=R80bY94XjBQ&feature=related

シャフトの曲がる「H.S.HD FLEX」「H.S. FLEX」は、
曲がらないモデル「H.S.HD」「H.S.」より洗浄ノズル位置が高いのが判ります。

 

 

●▲■ ご紹介YouTube動画 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
  高ガス含有量の清酒・焼酎の製造/充填機、
  「TAN3 ROBO(タンサン・ロボ)」(発泡飲料試作プラント)
   +「BF IV(ビー・エフ・フォー)」(卓上ガス飲料充填機)@FOOMA2011
  http://www.youtube.com/watch?v=rmYraR_eKNo

 

「TAN3 ROBO」はストーン内蔵のガス添加プラント。
高耐圧0.4MPa、冷却機能付き、150リットルタンク。

ベストセラーのカウンタープレッシャ充填機「BF」が
全面改良でシリーズ「IV」になりました!
よりガス含有量の高い飲料に対応する新型バルブ搭載。

カタログはこちら↓
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/BFIV_wop.pdf
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/TAN3ROBO_WOP.pdf

「TAN3 ROBO」+「BF IV」=高いガス含有量の飲料の生産・試作に好適!

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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