●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.158 ●▲■
     発行日:2011年9月27日(火)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 韓国の酒類事情@2011 その1:清酒工場を見学 ●▲■ 

●▲■ LOTTEは「世界最大の清酒工場」? / 一升壜が6割 /
     LOTTE清酒の4種のラインナップ / LOTTE清酒の歴史

                  (text = 喜多常夫)

ご紹介商品●1▲「150リットル」炭酸飲料試作装置→「TAN3 ROBO」
ご紹介商品●2▲「30&50リットル」炭酸飲料試作装置→「TAN3 Lab」
ご紹介資料●3▲「18&36リットル」炭酸飲料試作装置→「Z&N」

 

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何人かの関係者から聞きかじった話を総合すると、
韓国の各酒類の勢力図はこんな感じらしい。

 ■ビール:1位Hite、2位OB。マイクロブルワリーもある。

 ■焼酎:1位ジンロ(眞露)、2位LOTTE(日本では「鏡月」)。
    以下中堅の焼酎メーカーが数社。

 ●清酒:1位LOTTE(清酒製造は、現在LOTTEのみ?)

 ■マッコリ:1位ソウルマッコリ、2位麹醇堂(クッスンダン)、
    3位ジンロ、4位二東(イドン)。以下、各地に700〜800社。

 ■薬酒、法酒、リキュール:慶州法酒、麹醇堂(「百歳酒」)、
    「商冕(ぺ・サンミョン)などが大手。以下数社。

 ■梅酒:LOTTE、宝海(ボハエ)が大手。以下数社。

 ■ワイン:1位LOTTE。他に数社。ブティックワイナリーもある。
    バルク輸入による壜詰め製品も。

 ■ウイスキー:メーカーはない。ジンロ、ディアジオ・コレアが
    輸入した原酒を韓国国内で壜詰め、製品化。

 

「LOTTE」と「ジンロ」が繰り返し登場するのが判る。

LOTTE(ロッテ)とは、お菓子のLOTTE。
日韓にまたがるLOTTE財閥の一部門、「LOTTE酒類BG」のこと。
(英語ではLOTTE LIQUOR BUSINESS GROUP)

もともとLOTTEには酒類部門がなかったが、
2009年3月に斗山(ドゥサン)財閥の酒類BGを買収した。
(斗山はOBビールも持っていたが、
こちらはInBev(AB InBevに合併前の)に売却。
その後、今は、OBビールは投資会社傘下。)

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9月初旬に、「LOTTE」と「ジンロ」の工場が見られるという
韓国酒類業界視察ツアーがあったので参加してきた。

ツアー参加者は、当社から3人、清酒メーカー、
醸造機器業者、米ディラーなど、10人強。

「韓国向けの、清酒とビールの輸出急増」
それにもまして
「韓国からの、マッコリとPB第三ビールの輸入急増」
は、業界注目の的。

また、この20年ほどで日本に形成された
いわゆる「韓国焼酎」(ジンロ、鏡月など)の
市場サイズは韓国国外で圧倒的な世界一。

お隣韓国の酒類業界事情は、
業界関係者として知っておきたいところである。

福島原発事故の影響や、
驚異的な円高ウォン安の影響も気になる。

 

  ●▲■ LOTTEは「世界最大の清酒工場」?

韓国で「清酒」と名乗って製造する企業は、
今や、少なくとも大手ではLOTTE酒類BGだけである。

ソウルから高速道路で南に3時間強。
朝鮮半島西岸の港湾都市、群山(クンサン)に
LOTTEの清酒工場がある。

前庭に芝生の広がる大きな敷地。
工場建屋は新しくはないが、
構内の状況を見ただけでも、
きちんと整備された工場であることがうかがえる。

まず工場見学前に大ホールで見せてくれた、
LOTTE酒類BGの日本語プロモーションビデオに、
ツアー参加者の皆は盛り上がった。
というか、違和感を持つ人が多かった。

 

世界地図が写って、以下のような流れで清酒を紹介する。

  「どの国も、その国を代表する酒がある。
    フランスにはワイン、
    英国にはウイスキー、
    ドイツにはビール。
    そして韓国には米の酒、清酒(!)」

独特の韓流パフォーマンス(?)を感じるが、
個人的には、その意気込みやよし、としておきたい。

事前に見ていたLOTTE LIQUOR BGの英文サイトでは、
「Sake」ではなく「Rice Wine」と紹介していたが、
欧米見学者向けの英語版プロモーションビデオでは、
「Sake」なのか「Rice Wine」なのか、興味があるところである。
(なお、清酒は韓国語では、チョンジュCheongju)

そして、ビデオはこのように締めくくられる。

  「LOTTE酒類の群山工場は、
    世界最大の清酒工場(!)です。」

「世界最大は白鶴・月桂冠でしょう」
と思ったが、、、

工場を見学すると、確かに負けず劣らずの醸造設備だった。

 

  ●▲■ 一升壜が6割(!)

工場内は見学者用通路が整備されている。
日本人見学者が多い故だろう、
要所要所に日本語の音声ガイダンスもある。

専門の案内嬢も付き添ってくれたが、
我々はいわば専門家グループなので、
工場長など幹部技術職の方3人が案内してくれた。
うち2人は日本で実習したので日本語ができる。

最初は「撮影禁止」と言われたのだが、
考え直してくれて
「クローズアップでなければOK」となったので、
スナップ写真を撮って、資料にまとめた。

●▲■アーカイブ資料「韓国清酒工場見学記」(2ページ)
  http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Koreansake.pdf

 

精米装置、製麹装置、蒸米機、圧搾機などは日本製。
設置時期は90年ころだが、よく整備されている。
圧搾機が10台程もずらりと並ぶ様は圧巻だった。

見学コース最後の壜詰めラインでは、
すべてのコンベアに壜が流れていてフル操業だった。
日本の清酒メーカーの壜詰めライン稼働状況を思えば、
うらやましい限り。

日本の清酒は紙パックが過半で、壜製品は今や少数派だが、
聞けばLOTTEの清酒は、
  「一升壜(1.8リットル壜)が全生産の6割(!)」
とのこと。

300ml、700ml、1.8リットルのガラス壜が製品のほんどで、
壜は回収・リユースするそう。
(180ml、1リットルの壜もあるが生産量は多くない。
紙パックはラインはあるが、現時点では製造中止。)

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LOTTEが買収する2009年以前の斗山の時代、
最盛期には清酒を25万石以上生産していたようである。

日本向け輸出は、
1995年〜2007年にかけては、多い年で1万6,000石
少ない年でも8,000石をバルク輸出していたが、
LOTTE買収前夜の2008年以降は激減している。

「今は欧州、アメリカ、東南アジア向けの輸出が多い」
と言っていた。(全量の1割弱を輸出)

また、LOTTEになって、
韓国国内向けはかえって増強された感もある。

現在の正確な生産量を確認し損ねたのだが、
15万石位ではないか。
世界一、というには誇張があるが、
日本大手の中に並べてもベスト5に入る規模である。

(生産量は30万石、という資料もある。
実際、群山工場の設計能力自体は30万石以上ある。
もしそうなら、本当に世界一かもしれない。)

 

 

  ●▲■ LOTTE清酒の4種のラインナップ

LOTTE酒類BGは、
韓国国内に3つの工場をもち、

 ■清酒
  ■焼酎(日本では「鏡月」が有名だが、
       韓国では「チョウムチョロム」が人気)
  ■梅酒(漢字表記で「雪中梅」という銘柄)
  ■ワイン(カベルネSなど本格的なものも)

の4種の酒類を製造する、総合酒類メーカー。

そして、清酒のブランドは以下の4本立て。

 ●「白花寿福(ペカ・スボク)」
  清酒事業の発祥は1945年創業の「白花」で、
  それを引き継ぐ伝統の銘柄。
  アーカイブ資料に、LOTTE工場に展示してあった
  白花ラベルの変遷の写真を掲載しているが、
  それによれば1969年に「寿福」を付け加えたようである。
  「白花寿福」は先祖供養の酒としての需要が多い。
  訪問した9月初旬はお盆(韓国は旧暦)直前で、
  「このブランドはフル生産」とのことだった。

 ●「清河(チョンハ)」
  1986年発売。韓国国内で大ブームを起こした冷用清酒。
  独特の酸味。
  以前、日本の関係者から
  「麹はリゾープス(韓国で伝統的な曲子麹のカビ)ではないか」
  という話を聞いたことがあったので確認してみると
  「オリジナルの麹菌だが、
  アスペルギルス・オリゼー(=日本と同じ)です」
  との回答だった。

 ●「菊香(グックヒャン)」
  純米酒で、「白花」の上位ブランド。1990年発売。

 ●「雪花(スルファ)」
  最高級の大吟醸酒で、精米歩合52%。1994年発売。

 

「雪花」だけはラベルに漢字で「雪花」と表記されるが、
「白花寿福」「菊香」「清河」には漢字表記はない。
(「清河」は「清」の漢字一文字をデザイン的に使っているが)

かつてラベルの銘柄はすべて漢字表記だったが、
2006年ごろから漢字は消えて
ハングル文字表記になっているので
日本製清酒と間違う韓国人・日本人はいない。

なお、ロッテマート(ソウルの代表的スーパー)で見た、
4銘柄の店頭販売価格を記録しておく。

 「白花寿福」1.8リットル: 9,400ウォン
  「白花寿福」700ml: 4,450ウォン
  「白花寿福」180mlカップ: 1,550ウォン
  「菊花」700ml: 6,900ウォン
  「清河」300ml : 1,570ウォン
  「雪花」700ml: 19,600ウォン
(注:1ウォン=約0.07円。
「白花寿福」カップが約110円、「雪花」が約1,370円)

比較のために、
同じ店頭で販売される日本製の清酒の価格を記すと、
こんな具合。

 白鶴・本醸造・匠技720ml: 28,800ウォン
  白鶴・まる500ml紙パック: 9,800ウォン

 

  ●▲■ LOTTE清酒の歴史

LOTTE酒類BGの清酒部門の創業は、
1945年(=終戦の年)と公表されている。
これは「白花醸造」が設立された年。

日本占領下だった朝鮮(今の北朝鮮と韓国)には、
終戦時点で100社以上の清酒メーカーがあった。
例えば、清酒大手銘柄では、
白鶴、桜正宗、菊正宗、月桂冠が、
朝鮮半島で清酒製造工場を経営されていた。

終戦で多くの日本人経営の清酒工場が、
朝鮮人に引き継がれたが、
「白花醸造」もその一つ。

「白花醸造」の前身は、
岡山出身の西原という人が1915年に設立した
「朝鮮酒造株式会社」だったそうだ。
論山(ノンサン)が本工場、群山(クンサン)が分工場。
銘柄は「朝花(あさのはな)」。

前掲のアーカイブ資料の中にLOTTEの見学コースで撮影した
「1970〜80年代の新聞広告」の写真を掲載したが、
「白花」に交じって「朝花」もある。
戦後も一部で「朝花」銘柄を使っていたのだろう。

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朝鮮戦争後の北朝鮮側の消息はよくわからないが、
韓国側では1970年代初頭時点で、
30社程度の清酒メーカーがあったそう。

しかし当時は、韓国は(日本も)米不足時代。
韓国政府は食糧政策として、
1974年に米を使用する清酒製造を
「白花」「鶏明」「朝海」の3社に制限。

その後、
1983年に、Crownビール(現、Hiteビール)が、
「鶏明」(後にCrownにちなんで「金冠」に改称)を買収。

対抗して、
1985年に、OBビールを傘下に持つ斗山が、
「白花」を買収。

清酒が、2大ビール会社の代理戦争の場となった。
結局、「清河」が1990年代にヒットした、
白花・OB側が清酒戦争に勝利。

逆に、ビールでは「Hite」をヒットさせたCrown側が勝利。
Crownは清酒「金冠」の製造を1999年頃に停止した。
(「朝海」は1997年ごろすでに製造停止済み。)

その結果、2000年以降、
韓国で(少なくとも大規模に)清酒を製造するのは
斗山酒類BGだけとなり、
それが2009年からLOTTE酒類BGに移行した、、、
というのが歴史である。

(醸造協会誌2009年7月・8月号の筆者の投稿に
韓国清酒の歴史をもう少し詳しく書いています。)

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当たっていないかもしれないが、
LOTTEの展示品を見て思った推測を一つ。

アーカイブ資料に収録した
現在に至る「白花」のラベルの変化の中に、
1960年代の輸出用の銘柄で
「新羅(しらぎ)の花」というのがあった。

群山(全羅北道)の場所を考えるなら、
「百済(くだら)の花」のはずなのに、、、
とひっかっていたのだが、
帰国後、韓国ガイドを読むと以下のような記述があった。

1960年代に軍事クーデターで大統領となった
朴正煕(パク・チョンヒ、日本の陸軍士官学校卒)は、
出身地の慶尚道(昔の新羅)を持ち上げ、
政敵、金大中(キム・デジュン)の地盤、
全羅道(昔の百済)を徹底的に排除した。

新羅は、百済、高句麗を倒し、
初めて朝鮮半島を統一した国。

朴大統領は「新羅の再現を夢見た」といわれるそうで、
「新羅の花」は、
そんな政権下でつけられたネーミングかもしれない、、、

これは、全く個人的推測です。

 

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  ●▲■(おまけ)群山の日本人家屋

LOTTE清酒工場のある群山(クンサン)は、
今は人口26万人の地方中堅都市だが、
戦前は、ソウルを除けば、
釜山(プサン)、木浦(モッポ)に次ぐ3番目の都市だった。

港もあるし、穀倉地帯も控えていて、
日本人も多く住んでいた。

群山で「戦前の日本人家屋」というのを見学したので、
アーカイブ資料の最後に写真を掲載しておいた。

街中にはいくつか日本家屋が残っているが、
広津さんという人の日本家屋が特に立派で、
屋内も見学できるようになっている。
占領期、布売りで富を築いた人だそうだ。

ガイドさんによれば、
多くの日本人家屋は終戦で襲撃されたが、
広津さんは朝鮮人を重用し、きちんと給料を払っていたので、
終戦時もそのまま残ったとのこと。

奥さんはきれいな人だったそうで、
顔を見られずに人力車で土間まで入れる設計。

何と、畳は終戦当時のものである由。
建物といい、庭園といい、見事な日本式だった。

 

かつて、敗戦の足音迫る中、
この街に暮らした日本人は、
70年後に日本式家屋が観光資源になるとは、
夢想だにしなかったろう。
              (text=喜多常夫)

(「韓国の酒類事情@2011」は次号に続く)

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さて、商品の紹介です。

炭酸飲料試作用のパイロットプラントの
ラインナップを強化して、3本立てにしました。

スパークリング酒類・飲料の試作・実験装置なら、
きた産業にお任せください!

 

●▲■ ご紹介商品 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
150リットル炭酸飲料試作装置・新製品「TAN3 ROBO」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/TAN3ROBO_WOP.pdf

 ●耐圧:0.4MPa=高ガス含有発泡飲料試作可能
  ●冷却装置:内蔵(冷凍機搭載)
  ●容量:150リットル(最小70リットルで試作可能)
ブラインでなく冷却ガスで直接冷やす「直膨式」で高効率冷却。
小規模商業生産にも対応できる容量。

 

●▲■ ご紹介商品 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
30&50リットル炭酸飲料試作装置・新製品「TAN3 Lab」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/Carb.Plant.pdf

 ■耐圧:0.5MPa=高ガス含有発泡飲料試作可能
  ■冷却装置:実験室用冷却水循環装置で対応
  ■容量:30または50リットル
実験室用途に最適。攪拌機搭載でガス添加時間を短縮。
ボトル缶、PETボトル、ガラス壜など様々なマニュアル充填装置も対応。

●▲■ ご紹介商品 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
18&36リットル炭酸飲料試作装置「Z&Nパイロットプラント」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/PilotPlant.html

 ▲実用耐圧:0.25MPa(セーフティーバルブ開放圧)
  ▲冷却装置:なし(冷やした液で使用します)
  ▲容量:18または36リットル
日本と世界の多くの実験機関で利用されるベストセラー。
長年の実績。アメリカ、Z&N社製。

 

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http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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