●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.160 ●▲■
     発行日:2011年10月15日(土)
  ■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

------------------< 目 次 >------------------

●▲■ 韓国の酒類事情@2011 その3:
            日本のビール(とウイスキー) ●▲■ 

●▲■ インチョン空港の税関にて / ビール売り場観察
    / ウイスキー売り場も観察 / 日本の全4銘柄を扱う酒類卸

                  (text = 喜多常夫)

インターネット・ショップを開業しました!!

●▲● ご紹介情報:10月開店「うぇぶ・びん屋」●▲●

     http://web-binya.online-store.jp

 

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ソウルの繁華街を歩くと
「日式居酒屋(日本居酒屋)」が驚くほど多く、
必ず日本のビール、
キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーのいずれか、
または複数の銘柄を扱っている。

「日式居酒屋」だけでなく、
「マッコリ居酒屋」や「韓国料理店」でも
日本製ビールの看板が目立つ。

看板の数では
「アサヒ・スーパードライ」が多いように見えるが、
「サントリー・プレミアムモルツ」の新しい看板も目立つ。

 

 

韓国酒類業界視察ツアーのレポート、3本目。

前々回の韓国製清酒、前回のマッコリに続き、
今回は、日本のビールの進出状況報告。
ウイスキー事情にも少々触れる。

 

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 ●▲■ 仁川(インチョン)国際空港の税関にて ●▲■

 

ツアーでは、仁川(インチョン)国際空港の税関で、
日本からのお酒の輸入状況の説明を受けた。

(民間の視察ツアーのグループに、
日本からのお酒の輸入データを抽出して説明してくれるとは、
なんとも素晴らしい税関官吏であるなあと感心。)

 

以下、この写真資料を見ながら読んでいただくとわかりやすい。

●▲■アーカイブ資料「韓国の日本製ビール事情」(2ページ)
  http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/J.beerKorea.pdf

 

インチョンがいかに優れた通関システムであるかのCMのあと、
日本からの各種酒類の通関実績データの説明があった。

ハングル文字表記なので項目名は読みとれないが、
HSコード「2203」の欄が「ビール」である。
(貿易統計の「HSコード」は世界統一基準で、
2203がビールなのは韓国も日本もアメリカも同じ。)

スクリーンに映し出された実績表を転載する。

  ●日本製「2203:ビール」

  韓国への輸入金額
   08年$732万、09年$786万、10年$1,148万、11年7月まで$953万
(注:韓国の統計はUS$表記である。)

  韓国の全輸入ビールに占める金額割合
   08年18.6%、09年21.2%、10年26.3%、11年7月まで29.9%

輸入ビールに占めるシェア3割越えは目前。
2011年の日本製ビールの輸入金額は、
3年前の2008年の2倍を超えるのはほぼ間違えない。

<3年で2倍のビジネス>は、なかなかないだろう。

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HSコードで見る、他の日本製酒類の輸入統計は以下の如し。

  ▲日本製「2204:ワイン類」
   韓国の全輸入ワインに占める金額割合
   08年0.0%、09年0.0%、10年0.0%、11年7月まで0.0%

残念ながら、日本製のワインは、
韓国ではほとんど売れていない。

  ▲日本製「2208:蒸留酒」(ウイスキー、焼酎など)
   韓国の全輸入蒸留酒に占める金額割合
   08年0.7%、09年1.0%、10年0.6%、11年7月まで0.8%

日本の本格焼酎や、
英、仏、ロシアなどで人気急上昇の日本ウイスキーも、
韓国では今のところ全く人気がないようだ。

 

一方、日本製清酒は、以下のような数字で、
日本製ビールと並んで急成長であることがわかる。

  ■日本製「2206:その他の醗酵酒」(清酒がここに含まれる)

  韓国への輸入金額
   08年$619万、09年$963万、10年$1,372万、11年7月まで$779万

  韓国の全輸入醗酵酒に占める金額割合
   08年86.1%、09年91.0%、10年82.2%、11年7月まで77.0%

日本製ビールは<3年で2倍のビジネス>と書いたが、
日本製清酒はその上をいく<2年で2倍のビジネス>である。
(08年→10年の2年で金額2倍)

 

 ●▲■ ロッテマートでビール売り場を観察 ●▲■

ソウルの代表的ショッピングセンター、
ソウル駅のロッテマートの酒売り場には、
世界各国の缶ビール、びんビールが売られている。

韓国製はもちろん、
日本の3社のビール、
ヨーロッパのビールも含め、数十種類がならぶ。
(日本勢はキリン、アサヒ、サッポロが各数品種あったが、
サントリーは売っていなかった。)

まず、日本ビールと韓国ビールの価格差を観察。

●アサヒ・スーパードライ「6缶」パック:14,280ウォン
●ハイト「12缶」パック:14,520ウォン

日本製は韓国製の約2倍。高価格である。

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次に、日本ビールと欧州ビールを比較。
缶や小びん(欧州330ml、日本350ml、韓国355ml)の価格。

●缶製品
アサヒ・スーパードライ(日本製):2,380ウォン
サッポロ(日本製):2,500ウォン
ハイネケン(オランダ製):2,180ウォン

■小びん製品
キリン一番(中国製):2,650ウォン
サッポロ(カナダ製):3,200ウォン
アサヒ・スーパードライ(日本製):2,490ウォン
ハイネケン(オランダ製):2,450ウォン
べックス(ドイツ製):2,650ウォン
ピルスナーウルケル(チェコ製):2,950ウォン
デュベル(ベルギー製):4,780ウォン

日本勢は欧州勢と価格で「真向勝負」。

日本銘柄ビールの売り場占有面積はとても広く、
「日本勢が[輸入ビール]でシェア3割」以上の勢いを感じる。
「日本勢が[韓国の全ビール消費]でシェア3割」くらいの感覚。

ただ韓国とEUはFTA(自由貿易協定)をすでに批准済み。
アメリカともFTA締結間近。
関税は暫時下がるので、
欧州・米国ビールは今後価格競争力を増すはず。

「日本勢シェア3割」の構図は
この数年で、塗り変わる可能性もある。

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なお、ロッテマートの酒売り場では、
すべての製品に国旗で生産国が表示されているのだが、

  ■サッポロの壜には「カナダ」国旗
   ■キリン・一番搾りの壜には「中国」国旗

がついていた。

サッポロの缶やキリンの缶など、
その他のサッポロ製品、キリン製品には日本国旗だが、
上記2品目だけは日本製ではなかった。

日本で売っているバドワイザーやハイネケンが
アメリカ製やオランダ製でないのだから、
そんなことは当たり前なわけだが、
ビールの国際分業はどんどん進んでいることを、
改めて実感。

 

 ●▲■ ウイスキー売り場も観察 ●▲■

ロッテマートではウイスキー売り場も観察した。

韓国は、
近年消費量減少傾向にあるとはいえ、
ウイスキー人気が高い国としてつとに有名。

高級贈答品としても使われるそうで、
60〜80年代の日本と事情が似ている。

売り場に並ぶのは、
「バランタイン」、「シーバスリーガル」など
スコッチ中心のプレミアム製品。

ブレンデッド・ウイスキーがほとんどで、
標準的なもので3〜5万ウォン、
年代物は10〜20万ウォン。

 

アーカイブ資料の写真には、
「ウィンザー」や「スコッチ・ブルー」という
聞きなれない銘柄が映っているが、これは韓国専用銘柄。
これらは少し安くて、2〜3万ウォンの価格帯から始まる。

酒類の大手JINRO(眞露)も、
「キングダム」というスコッチ銘柄を持っているそうだが、
これはロッテマートには売っていなかった。

韓国は財閥の国、系列の国。
商品を置く・置かないは、
そんな影響もあるのかもしれない。

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はて、さて、ジャパニーズ・ウイスキーは、、、
と、探したけれど、、、見当たらない。

サントリーやニッカがあってもよさそうだが、
前節で書いたとおりの日本製蒸留酒のシェアの少なさを実感。

日本ではスコッチウイスキーの「価格が下がって」、
1980年代後半以降売れなくなった経緯がある。
(個人的意見だが、日本ではウイスキーは
「価格が下がったから売れなくなった」と考える。)

韓国でもFTA発効でスコッチの価格が下がって、
似たようなことが起こるのではないか。

ジャパニーズ・ウイスキーの出番は、
その先かもしれない。

 

 

 ●▲■ 大手酒類卸で輸入ビール事情を見る ●▲■

ツアーでは、酒類卸の大手、という会社を見学した。
   http://www.e-sul.co.kr/

ソウル市内の居酒屋、料飲店、ワインバーなどに卸しているそうで、
2010年の売上が約610億ウォン。
1ウォン=0.07円換算で43億円程度。

売上43億円と聞くと小規模のようだが、
韓国では大手(最大手?)とのことである。

韓国は、
店頭販売や飲食業の酒類販売免許は緩和する一方、
酒類卸売り免許を強力に統制しているそうで、
そんな影響で、酒類卸の規模が大きくならないようだ。

この会社では、ビールのほか、
韓国焼酎、ウイスキー、ワイン、日本の清酒・焼酎など
全酒類を扱うが、ビールの売上比率が一番大きく
約35%(約210億ウォン)だそうである。

倉庫ヤードを見ると、
なんと(!)キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、
4社すべて(!)の樽が並んでいる。

そのほか、
韓国のハイト、カス(OBのブランド)
欧州ブランドのハイネケン、ギネス、
ピルスナーウルケル、ヒューガルデン
などの生樽もあって、樽ビールだけで10種類以上。

壜入り、缶入りのビールもパレット単位で
日本の4社はじめ、数十種類が並んでいる。

こんなに多くの銘柄を扱うのは、
在庫管理も営業活動も大変そうだが、
韓国では多種類銘柄を扱う卸が一般的だそうである。

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この卸会社のビールに次ぐ売上2位は、
「洋酒」で27%(160億ウォン)。
(ワインは洋酒に含めないのでウイスキーが中心)

「洋酒」の売上は「焼酎(焼酒)」(3位、25%)より多い。
韓国のウイスキー人気を裏付けている。

倉庫ヤードには韓国専用銘柄「ウィンザー」が並んでいた。
これは韓国ディアジオがバルク輸入して国内充填している、
「スコッチ・ウイスキー」だそうだ。

不正詰め替え防止対策で、
「ICタグ付きキャップ」の適用地域を拡大し始めた、との話。

国によっていろいろなウイスキー事情があるものだ。

 

 

  ●▲■ 韓国のビール会社情報 ●▲■

韓国のビール会社について、わかる範囲で記録しておこう。
OBビールとHiteビールの大手2社体制。

●OB(オービー)ビール:
   日本統治時代の1933年、
   麒麟麦酒の出資によって設立された「昭和麒麟麦酒」を、
   戦後、同社株主だった朴承稷商店(現、斗山)が管理。
   1952年に「東洋ビール(Oriental Brewery)」として設立。
   OBはこの英語社名に由来。

  長らく斗山(Doosan)財閥の中核企業だったが、
   1998年にインターブルー(現、AB-InBev)に売却。
   2009年にAB-InBevはアメリカのファンド会社の
   コールバーグ・クラビス・ロバーツ社に売却して今に至る。

  主なビール銘柄は
   「Cass」(眞露クアーズのブランドを97年に買収)と
   「OB」(設立時からのブランド)。

■Hite(ハイト)ビール:
   日本統治時代の1933年、
   大日本麦酒の出資によって設立された「朝鮮麦酒」を、
   1952年に民営化。当初は「Crownビール」だったが、
   90年代にヒットした製品、「Hite」に社名を変更。

  主なビール銘柄は「Hite」と「Max」。

  つい最近「Hite-JINRO」という統合組織になったようだ。
  
   社名の後半分の「JINRO/眞露」は日本でも有名なブランド。
   その歴史はというと、
   日本統治時代の1924年、
   平安南道(現・北朝鮮)で「真泉釀造商会」として設立。
   朝鮮戦争の時に韓国側(釜山)に避難。
   1954年にソウルで「西光酒造」を設立、眞露焼酎を製造開始。

  長く焼酎市場のトップに君臨。
   90年代にはビール第3勢力を狙って
   CoorsとのジョイントでCassビールも発売したが、
   1997年に経営破綻、2005年にHiteビール傘下となった。

(以上は、ウィキペディアや各社のインターネット情報による)

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OBビールとHiteビールの主要輸出先は、
意外だが「香港」と「モンゴル」らしい。

加えて、近年は、「日本」向けの
PB「第三のビール」も大きな数字になっているはず。
(日本の大手スーパーの「格安PB第三」は韓国製が多い。)

  [日本ビール]と[日本酒]が韓国に輸出され、
   [韓国第三ビール]と[マッコリ]が日本に輸入され、
   それぞれ年々拡大中。

「いい隣国関係」と言うべきだろう。

 

 

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  ●▲■(おまけ)酒のキャップに納税印刷

 

韓国の新聞「中央日報」の日本語版の記事を転載する。
(一部を省略や補筆)

 ■●「酒瓶の蓋に納税印を押す国は韓国が唯一」

 ソウル大で開かれた「2010経済学共同学術大会」で、
  キム・ジングク培材(ベジェ)大学国際学部教授が
  「酒類産業参入規制の経済的妥当性分析」と題した論文を発表。

 酒類製造業に対する政府の行き過ぎた規制が従来の業者を過剰保護し、
  酒類産業の競争力を弱めている、と主張した。

 酒産業政策が酒税収入確保と脱税防止を最優先順位にしているため、
  結局、酒税関連法が酒類産業を支配するいびつな構造に変質させた。

 一例として、酒の蓋も競争制限となっている事を上げた。
  韓国では税源確保のため国内で生産される酒類には
  納税蓋(納税印紙の印刷のあるキャップ)が使用される。

 世界で唯一の酒税政策だ。

 蓋は国税庁の指定業者だけが製造でき、現在2社に限られている。
  脱税を防ぐためというが、納税蓋方式にこだわる名分はない。
  公取委が指定業者を2社から3社に増やすことにしたが、
  本質的な解決策ではない。

 競争を促進すべき公取委が、国税庁と妥協したものだ。

       (「中央日報」2010年02月10日の記事)

 

 

記事中段の「酒税関連法が酒類産業を支配する構造」には
我が国も思い当るフシがあるが、
お伝えしたいのは記事後半の「納税蓋」のこと。

韓国で焼酎などのお酒のキャップをよーく見ると、
ブランドのロゴ印刷とは別に、
ごく「うっすら」と封緘紙のようなパターンが印刷されている。

このキャップは酒税納税の印紙のような役割を果たす。

かつて60年代頃は日本でも、
輸入ウイスキーのキャップの上から
「課税済み」の封緘印紙が貼ってあったが、
それをキャップ自体に印刷してしまったもの。

韓国のキャップメーカーの幹部は
税務署からの天下りだそうだ。

(当社、きた産業はキャップメーカーだが)
同じキャップメーカーとして、大変驚くお国事情。

「所変われば、品変わる」である。

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「所変われば、品変わる」は、英語では、
「So many countries, so many customs」。

Customは「習慣」のほか「関税」と言う意味があるが、
まさにピッタリな事例である。
(ひょっとしたら、この諺の語源は
「お国変われば、税変わる」だったのか?)

                  (text=喜多常夫)

 

(「韓国の酒類事情@2011」は、さらに続くかも?しれない)

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 前回メルマガに続き、再度コマーシャルいたします。

 この度、インテーネット・ショップを開店しました!

●▲●▲ご紹介情報:10月開店「うぇぶ・びん屋」●▲●▲

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    どうぞ、のぞいて見てください。

 

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