●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.168 ●▲■
発行日:2012年7月2日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 世界の大手ビール産業:
再編ドミノ、国際的な規模追求 ●▲■
●■ 「サントリー・青島提携」と「ミラー・クアーズ」
●■ ビール大手世界トップ10(by Plato Logic)
●■ ビール大手世界トップ10(by 独自計算)
●■ 1位4,000万KL vs 日本大手4社合計で550万KL
(text = 喜多常夫)
ご紹介商品●1▲「Beer Radix IV」(ミラー・クアーズにも納入)
ご紹介商品●2▲炭酸ガス飲料の試作に「タンサン・ロボ」
ご紹介資料●3▲「ザルキンのキャッパー」総合カタログ
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今回は、世界のビール産業のお話。
3週間ほど前、日経新聞の第一面で、
「サントリーが青島ビールと提携」と報道された。
少し長いが記事を引用すると以下の通り。
「6月5日、サントリーは中国2位の青島ビールとの提携を発表。
上海・江蘇省の両社のビール事業を統合する。
年内にも生産、販売を手がける合併会社を折半出資で設立、
生産会社には両社の10工場を、販売会社には4社を移管。
アサヒは青島ビールに約2割を出資する第3位株主なので、
サントリーが提携を広げることはアサヒの対応も焦点となる。
サントリーは1981年、日本勢では最も早く中国に参入。
上海と、上海に隣接する江蘇省のみでビール事業を展開。
一大消費地の上海で2000年代初めに5割前後のシェアを握ったが、
近年は中国1位の華潤雪花に押されシェア3割程度。
上海3位の青島ビールと組んで首位の基盤を固める。
江蘇省では華潤雪花がトップで、
サントリーと青島ビールが2位グループ。
今回の統合で江蘇省でも首位となる。
サントリーは中国全土でのシェア1.6%、9位にとどまる。
独力では限界があると見て
地場大手と組くんだ戦略に切り替える。」
(日経新聞から抜粋)
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報道によれば、この提携話は、
青島ビール側からサントリーに持ちかけられたそうだ。
思いがけないこの提携の報道を読んで、
アメリカ2位のビール、「ミラー・クアーズ」を連想した。
11年以上前、
ミラーは米国2位、クアーズは米国3位の別々の会社だった。
10年前(2002年)、ミラーは南アフリカのSABと一緒になって
「SABミラー」となった。
7年前(2005年)、クアーズはカナダのモルソン一緒になって
「モルソンクアーズ」となった。
4年前(2008年)
SABミラーとモルソンクアーズはアメリカのビール事業を統合して
JVの「ミラー・クアーズ」を設立した。
ただ、JV設立後もSABミラーとモルソンクアーズは別会社のまま。
アメリカ以外では両社は別々に事業運営を行っており、
世界市場では競合関係−2011年現在、世界2位と世界8位−にある。
アメリカで圧倒的1位のABインベブ(バドワイザー)に対抗するため、
2位と3位が国内限定で事業統合する、という戦略。
一昔前なら非現実的な話だったと思うが、
時代は変わり、そんな経営戦略が当たり前になりつつある。
そういえば日本の銀行でも、三井と住友が統合して、
「三井住友銀行」(日本2位)が誕生した事例がある。
ただ、この場合、統合後は一つの会社になって
「三井住友」という一つのブランド名になった。
しかしミラー・クアーズの場合、
SABミラーとモルソンクアーズは別会社のままだし、
「ミラー・クアーズ」というブランドの商品は存在しなくて、
統合前と同じく「ミラー」と「クアーズ」は別々の名前で売っている。
ビールの生産統計上は、出資比率(58:42)に応じて
SABミラーとモルソンクアーズに割り振るそうだ。
(それぞれのブランド名で売られているのだから
実数があるはずで、出資比率というのもややヘンではあるが。)
たぶんサントリー・青島の場合も、
合併会社設立後も、
サントリービール、青島は別々のブランドを維持するだろうし、
地域限定であることや、大手同士のJVであることも含め、
経営戦略として近い事例ではないかと思う。
ほかにも、
「モエヘネシ―・ディアジオ」
(高級ブランドのルイヴィトン・モエヘネシ―と、
ギネスビールやジョニーウォーカーのディアジオの販売のJV)や、
「エールフランス・KLM」など、
「20世紀の経営発想ではにわかに信じられない国際JV」
というのは、世の中に既にたくさんある。
世界的に有力な企業同士の提携や経営統合は、
これからますます増えていくのだろう。
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「サントリー・青島ビールのJV」の報道に限らず
ビール産業に関しては、
国内外のM&A、国内市場の需要動向、
大手4社の経営戦略、新製品、等々、、、
日々多くの新聞報道や業界情報があるけれど、
個別に記事を読んでいても全体像が分かりずらい。
そこでこの機会に、世界情勢について少々調べてみた。
(素人の調査ゆえ間違えもあるかもしれないし、
大手ビール関係者にとっては百も承知のことと思いますが、
ご容赦ください。)
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「世界のビール会社の大手10社」をご存じだろうか?
イギリスにビール業界専門に調査をしている
Plato Logicという会社があって、
その資料によれば2010年時点のランキングは次のとおり。
●▲■ 2010年世界トップ10(Plato Logic)
順位* 社名
主な所在地 ???????????? 2010年の概略生産量*
1位 ? アンホイザ―ブッシュ・インベブ AB InBev
ベルギーとアメリカ ???????????? 3,500万KL
2位 ? サブ・ミラー SAB Miller ???????
南アとアメリカ(本社は英国)??? 2,500万KL
3位 ? ハイネケン Heineken
オランダ ?????????????????????? 2,000万KL
4位 ? カールスバーグCarlsberg
デンマーク ???????????????????? 1,200万KL
5位 ? 青島ビール Tsingtao
中国 ?????????????????????????? 600万+KL
6位 ? モルソン・クアーズ Molson Coors
カナダとアメリカ ?????????????? 500万+KL
7位 ? グルポ・モデロ(「コロナ」)Modelo
メキシコ ?????????????????????? 500万KL
8位 ? 燕京ビール Beijing Yanjing
中国 ?????????????????????????? 500万KL
9位 ? キリンビール Kirin
日本 ?????????????????????????? 300万+KL
10位 アサヒビール Asahi
日本 ?????????????????????????? 300万KL
*順位と生産量はPlato Logicによる推定。
キリンとアサヒの日本における生産量は200万KL強。
それぞれ300万KLとなっているのは傘下企業を含めての数字だが、
どこまでを含めているかはPlato Logicの基準による。
AB InBev、SABミラー、ハイネケン、カールスバーグ
の上位4社の数量が際立っているのがわかる。
4社だけで世界シェア50%。
中国の2社、青島ビール、燕京ビールも強い。
近年ぐんぐん数量を伸ばしている。
日本のトップ、キリン、アサヒは、
世界では9位、10位はいいとしても、
トップとの生産量の差は10倍以上であることには、
少々慄然とするものがある。
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Plato Logicはすでに2011年の順位も発表している。
●▲■ 2011年世界トップ10(Plato Logic)
1位 ? アンホイザ―ブッシュ・インベブ AB InBev
2位 ? サブ・ミラー SAB Miller ???????
3位 ? ハイネケン Heineken
4位 ? カールスバーグCarlsberg
5位 ? 青島ビール Tsingtao
6位 ? 燕京ビール Beijing Yanjing
7位 ? グルポ・モデロ Modelo
8位 ? モルソン・クアーズ Molson Coors
9位 ? キリンビール Kirin
10位 エフェス Efes(トルコのビール)
5位までは2010年と同じだが、
6位以下は入れ替わっていて、激戦ぶりがうかがえる。
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さて、以上のトップ10ランキングには、
「サントリー・青島ビールのJV」の新聞記事にあった、
中国1位の「華潤雪花」の名前が出てこない。
華潤雪花の2011年の生産量は1,142万KLもあるそうだ。
(1,027万KLという記事もある。)
これを単体と見れば世界5位となる。
米国2位の「ミラー・クアーズ」もランキングにない。
ミラー・クアーズの2011年の生産量は766万KLで、
これを単体と見れば世界6位。
先にも書いたが、
生産統計上は、「ミラー・クアーズ」の生産は
出資比率の58%:42%に応じて分割して、
SABミラーとモルソン・クアーズに割り振っているそうだ。
華潤(英名:China Resources)とSABミラーの合併会社の
「華潤雪花」の処理については説明が見つけられなかったが、
たぶん同じような扱いで、
SABミラーの出資比率49%分を割り振っているのだろう。
そこで試みに、
出資に応じた割り振りを「行わない」2011年ランキングを
素人仕事ながら計算してみた。
また、その他の情報も含めてPPT資料にまとめてみた。
●▲■ ご紹介情報 アーカイブ資料 ●▲■
ビール業界の動向#1「世界マーケット」編(全9ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Beer_Ind_1.pdf
上記資料の5ページ目に詳しく書いているのだが、
出資に応じた割り振りを「行わない」ランキングは次の通り。
●▲■ 2011年世界トップ10(独自計算による別の見方)
1位 ? アンホイザ―ブッシュ・インベブ AB InBev
2位 ? ハイネケン Heineken
3位 ? サブ・ミラー SAB Miller
(華潤雪花分とミラー・クアーズ分を除く)
4位 ? カールスバーグCarlsberg
5位 ? 華潤雪花 China Resources Snow
6位 ? ミラー・クアーズ MillerCoors
7位 ? 青島ビール Tsingtao
8位 ? グルポ・モデロ Modelo
6位 ? 燕京ビール Beijing Yanjing
10位 キリンビール Kirin
10位のキリンは、
2011年にブラジル2位のスキンカリオールを100%買収している。
それ以前からの保有分、
100%出資するオーストラリア2位のライオンネイサン、
48%出資するフィリピン1位のサンミゲル、
などの数量を加算するとすれば、
2012年はランクを上げる可能性も高い。
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世界のビール業界の勢力図は、
この十数年で全く変わってしまった。
1990年代半ばには
キリンは世界5位か6位で、
このときのキリンと1位の販売量の差は3倍程度だったそう。
2000年時点では
キリンは世界10位で、
上位4社(1.AB 2.ハイネケン 3.インターブリュー 4.AmBev)
のシェアは29%だった。
2007年時点では
キリンはトップ10ランク外となり、
上位4社(1.SABミラー 2.InBev 3.ハイネケン 4.AB)
のシェアは44%だった。
2010年には既述のとおり、
キリンは世界9位で、
キリンと1位の販売量の差は10倍以上、
上位4社(1.AB InBev 2.SABミラー 3.ハイネケン 4.カールスバーグ)
のシェアは50%以上になった。
世界的規模追求のため行われたこの十数年のM&Aは、
驚くべきスピードで進行し、
上位企業のシェアは大きく高まった。
まさに「ドミノ倒し」のような合従連衡(がっしょうれんこう)。
現在進行形である。
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ちょうどこの文章を書いている日に新聞で、
「AB InBevがコロナを完全買収」
という記事が出ていた。(日経新聞6月30日)
AB InBevは従来から、
コロナ(グルポ・モデロ)の株式の50%を持っていたが
その株は「非支配株主持ち分」なので、
Plato Logicの世界ランキングでは、両社は別々の扱いだった。
しかし、報道の通り完全買収となると、
AB InBevの3,500万KLにコロナの500万KLが加算されて、
世界1位の生産量は4,000万KL(!)にもなる。
一方、日本の大手4社分を足しても、
550万KL程度(国内分)でしかない。
海外分を含めても1,000万KL程度だろう。
日本のビール各社は、
人口減少の国内市場での激戦もさることながら、
世界のビール産業において、
ますます難しい舵取りを強いられるように思います。
(text: 喜多常夫)
(追記:AB InBevは現在「アンハイザー」と表記するのが通例ですが、
アーカイブ資料をつくる時に昔式?の「アンホイザー」と記したので、
このメルマガの文章でもアンホイザーで通しています。)
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商品のご紹介です。
●▲■ ご紹介商品 その1:ROOTSディビジョン ●▲■
ラボ用ビール缶充填機「Beer Radix IV」(ミラー・クアーズにも納入)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/Beer_Radix3_ed02.pdf
メルマガ本文に登場するミラー・クアーズの、
ミルウォ−キーの研究所に、昨年、納入させていただいた機械。
「Beer Radix(ビア・ラディクス)」は、
世界に類を見ないラボ用ビール缶充填機です。
充填によるDO(溶存酸素)増加量をきわめて低くコントロール可能。
ビールに限らず、飲料や食品なども含め、
研究所やパイロットプラントの缶詰設備ならお任せください。
(カタログは改訂が間に合っていなくて「III」となっていますが、
現在はバルブ構造などを見直した「IV」に進化しています。
詳細仕様はご照会ください。)
●▲■ ご紹介商品 その2:ROOTSディビジョン ●▲■
炭酸ガス飲料の試作・小規模生産に「タンサン・ロボ」
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/TAN3ROBO_50_30.pdf
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/gas/TAN3ROBO_150_100_WOP.pdf
発泡飲料の試作・小規模生産のためのパイロットプラント。
高耐圧(0.4〜0.5MPa)タンク、
セラミックストーンによるカーボネーション。
30リットル、50リットル(専用チラーで冷却)と
100リットル、150リットル(冷凍機搭載)の
各容量があります。
炭酸ガス添加のことなら、
ラボスケールから量産設備までお任せください。
●▲■ ご紹介商品 その3:ROOTSディビジョン ●▲■
「ザルキンのキャッパー」総合カタログ(全6ページ)
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/machine/zalkin_catalog.pdf
フランス・ザルキン社のキャッパーは、
世界中の有力な飲料、酒類、化学、薬品などの企業で使用されています。
日本でも多くのお客様にご採用いただいている
ロールオンキャッパーのほか、
プラスチックキャップ用のスクリューキャッパーも、
精度の高い巻き締めで定評があります。
キャッパーのことならお引き合いください。
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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」
http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html
2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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●▲■ブログもやってます!「スローなブログ」
http://blog.goo.ne.jp/kita-slow_blog/
2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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