●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.205 ●▲■
発行日:2015年4月23日(木)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com

 

 

------------------< 目 次 >------------------

 

●■▲ 高温熟成のお酒、マデイラ ●▲■

   ●■ 添加アルコールはブドウ由来-日本酒への教訓
●■ マデイラ島7社、アイラ島8社、奄美大島10社

                    (text = 喜多常夫)

 

ご紹介情報●1▲ 「PEQI」ワインのスクリューキャップのスカートカッター
ご紹介情報●2▲ ワインびん、コルク、ラベルなどのご採用事例
ご紹介情報●3▲ シャンパン壜と関連資材

 

 

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マデイラ、というお酒をご存じでしょうか。
シェリー、ポートとならぶ「三大酒精強化ワイン」の一つ。
大西洋に浮かぶ、ポルトガルのマデイラ島でつくられるワインです。

食前酒として冷えたシェリーを飲む人はよくいるし、
国際線の機内サービスではデザートの時に必ずポートを準備している。

一方マデイラは、、、
シェリーやポートほどはなじみがないように思います。
日本では「牛肉のマデイラソース煮込み」など料理用のイメージが強い。

昨年暮れ、
ポルトガルのワインコルクの仕入れ先(アモリム社)を訪問するついでに、
足を伸ばしてマデイラ島まで行ってきました。

 

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 「酒精強化ワイン」

   醗酵途中または醗酵終了後に、
アルコールを添加するワイン。
英語では「Fortified Wine」で、
フォーティファイとは、強化する、元気にする、という意味。
元々は航海中の品質を保つ(強化する)ために行われた手法。
英国が世界に君臨していた時代に始まった技術。

 

三大酒精強化ワインの
シェリーはスペインのお酒、
ポートとマデイラはポルトガルのお酒ですが、
三つとも歴史的に英国との関係で広まった経緯がある。
英国人が創業したブランドも多い。

  「シェリー、ポート、マデイラは
英国の影響で世界に認知されたお酒」

と言えると思います。
(もっとも英国は歴史的にワイン全般と縁が深く、
ボルドーでさえ英国なしに今の名声はなかったかもしれませんが。)

 

「酒精強化」は14世紀に始まった手法。(17世紀説もあるが。)
パスツールがワインで低温殺菌法を見出したのが19世紀後半なので、
それ以前は有力なワイン保存法だったと推察します。

今でこそワインは低温殺菌も酒精強化もせずに壜詰めして
普通に流通していますが、
戦後まで米国やオーストラリアには酒精強化ワインが多く存在したそうです。
(米国もオーストラリアも英国文化圏。)

シャンパンの「門出のリキュール」(甘み調整等のため最後に添加する)に、
かつてはブランデーも入れていたそうですが、
やはり品質安定を意図していたのかも知れません。

 

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「酒精強化」以外に「プラスアルファの特徴」があるのが、
三大酒精強化ワインの共通点。

  シェリー:「酒精強化」+「ソレラシステム」
ポート:「酒精強化」+「醗酵途中添加による極甘口」
マデイラ:「酒精強化」+「高温熟成」

 

歴史的に見ると、
シェリーとポートは、
「酒精強化」が先(14世紀あるいは17世紀)
「ソレラ」、「甘口」は後(19世紀)

一方、マデイラは、
「高温熟成」が先(17世紀)
「酒精強化」が後(18世紀半ば)

 

シェリーとポートはまず
「酒精強化ありき」ですが、

マデイラは、歴史的にも、
そして現地をみた感想としても、まず
「高温熟成ありき」のお酒のように思いました。

 

高温熟成は、
かつては、建物の2階以上にワイン樽を置いて、
1階で焚き火を燃やして高い室温にする、
という方法だったようですが、
今は、「クバ・デ・カロール」(タンク内に温水蛇管を通す)
または「カンテイロ」(太陽熱で暖まる建屋)内で熟成
の2種類の方法に落ち着いています。

 

マデイラの高温熟成は徹底的酸化環境。
「開栓後、数週間」はシェリーやポートももつけれど、
「開栓後、年単位」で品質を保てるのがマデイラの自慢。
酸化しきっているので、もうこれ以上劣化(酸化)しない。

 

今回訪問した中で、バーベイト社で、
「1880年(!)のマデイラ」を試飲させてもらいました。
リコルク(コルク栓の打ち替え)も何度かしただろうし
貴重なのでチビリチビリと飲むので
開栓後ずいぶん日がたっているはずですが、
とてもすばらしい味を保っていました。
マデイラの「年単位」の品質保持力を実感した次第。

 

(余談ながら、、、
台湾に数年前に出現したウイスキー「KAVALAN」は最近欧州で評価が高い。
台湾は高温故に「エンジェルスシェア」(樽貯蔵中に自然蒸発する分量)が
極端に多いらしいが、そのことが品質に利いているのは間違えない。
低温熟成、音響熟成、海底熟成、海洋熟成などなど、様々あるけれど、
高温熟成というのは案外応用範囲が広いのかもしれない、と思いました。)

 

 

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マデイラの酸化環境は熟成だけでなく、
そもそも搾汁(=ブドウをつぶす)段階から酸化状態。

「酸素のない環境でブドウを搾って品質の高い白ワインを作る」手法は
この10年ほどで世界中に(日本にも)広まったけれど、
シェリーもポートもマデイラも、その真逆。
伝統的には(少なくとも戦後までは)、
「ラガール」という大桶にブドウを入れて、
10人以上のチームで足で踏んでつぶしたので、完全な酸化環境。

 

とはいえたぶん、シェリーもポートも1990年代は、
少なくとも世界的大手ブランドでは、
メンブランプレスなど効率の良い搾汁機を導入したと思います。
足でつぶすなんて手間はかけられないし、
衛生上の問題もある。

しかし21世紀に入って
開放大桶にブドウを入れて、人の足ならぬエアシリンダーの足でつぶす
「ロボット・ラガール」(英語ではロボティック・ラガール)
という設備に切り替えるところが増えました。

いわば伝統方式をそのまま自動化した機械。
感覚的には酸化させない処理法がベターだと思うのですが、
やはり、伝統方式には「なにか」があるのでしょう。

「酸化を気にしないワイン造り」は時代に逆行するようですが、
ニュージーランドでも見ました。
色々な可能性があるのかもしれません。

 

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マデイラで見た「ロボット・ラガール」、
それに「クバ・デ・カロール」や「カンテイロ」のことなどを
アーカイブ資料にまとめています。

 

   ●▲■ アーカイブ資料 ●▲■

「酒精強化ワイン見学の記録、マデイラとポート」(10ページ)
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/madeira&port.pdf

 

マデイラのあと訪問したポルトのポートワインも記載しています。
戦前のポートワインの醸造所の写真や、
サンデマン(ポートワイン大手)とサントリーの歴史的ポスター比較、
などもあります。

 

 

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 ●■ 添加アルコールはブドウ由来-日本酒への教訓

 

マデイラ島は「常春の島」といわれる。
南の島故、サトウキビが多く採れる。

「添加アルコールはサトウキビから造るのですか?」
とたずねたところ、言下に
「NO」の返答。

 

聞けば、かつて、
サトウキビ由来アルコールを用いた時代があったそうだが、
1970年代から「ブドウ由来アルコール」使用がルールだそうだ。

マデイラだけでなく、シェリーもポートも、酒精強化は
「ブドウ由来アルコール」(度数は95%~75%くらい)に限っている。

 

どういう経緯でそう定めたのかは訊けなかったし、
あるいは慢性的余剰ブドウのなせる業だったかもしれないけれど、
「ブドウ由来アルコールに限る」ルールは
ブランド価値に貢献する正しい決定だったと思います。

逆説的に説明すれば、
もし「サトウキビ廃糖蜜のアルコールを添加」を継続していたら、
酒精強化ワインはこれほどの世界ブランドにならなかったと思います。
「主原料だけでなく添加物原料もブドウ由来」である事は、
ワインとして納得しやすい。

 

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清酒の本醸造や普通酒に添加するアルコールは、
海外産の「サトウキビ由来」の粗留アルコールを精製した
99%以上の純アルコールであったりするけれど、
清酒のアルコール添加を続けるのであれば
「米由来アルコール」、あるいは、
「米焼酎」にしていくべきではないかと考えます。

 

清酒のラベルの原材料表示には、
数年前の米に関する色々なトラブルを契機に、
「米」には括弧書きで「国産」などと由来を書くようになったけれど、
「醸造用アルコール」の由来は何も書いていません。
日本では何か起こるまで気にしないのかもしれませんが、
世界のサケファンはサケに詳しくなるにつけ、引っかかる、と思います。

 

酒精強化ワインのアルコール添加は「品質強化目的」で、
添加量は実はそれほど多くない
(十数%まで醗酵したワインに添加して、度数を数%上げる程度)
のに対し、清酒の多数派ジャンルである普通酒は2倍添加が一般的。

本醸造酒のアルコール添加は「品質改善目的」かもしれませんが、
普通酒では、ほぼ「増量目的」。
しかも、海外産のサトウキビ由来アルコールで増量、というのでは、
「主原料:国産米+海外産サトウキビ」状態です。
「米から造ったサケ」とは納得してもらいにくいと思います。

 

イタリアやフランスのびん内二次醗酵スパークリングワインでも、
二次醗酵用に添加する糖分について
伝統的には「シュガービーツ(サトウ大根)由来砂糖」であるけれど、
「ブドウ由来砂糖」シフトを検討しているメーカーもあります。

日本のビールでも、
「キリン一番搾り」、「サントリープレモル」、「サッポロヱビス」など、
「オールモルト(麦芽100%)」で勝負しようという流れが見えます。

 

世界的に表示ルールが厳しくなること以上に、
消費者側が原料の由来に敏感になっています。

世界マーケットの中で、
ジャパニーズサケの、
これから100年のブランド価値構築のためにも、
添加アルコールについて厳しいルールを設定すべきではないか、、、
と、大西洋のマデイラ島で考えました。

 

 

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 ●■ マデイラ島7社、アイラ島8社、奄美大島10社

 

  ポルトガルのマデイラ島
マデイラワイン醸造所が7社
スコットランドのアイラ島
ウイスキー蒸留所が8社
日本の奄美大島
黒糖焼酎蒸留所が10社

実は今、得意先訪問のため奄美大島にきています。

偶々、3つの島すべてを訪問した経験から、
マデイラ島、アイラ島、奄美大島を、勝手ながら、

    「世界の三大お酒の島」

に認定したいと思います。

 

「マデイラ酒」はマデイラにだけで造られる独自の酒。
「アイラ島のウイスキー」はスコッチの範疇ではあるけれど、
本土産スコッチとは明らかにキャラクターが違う独自の酒。
「黒糖焼酎」は奄美列島でのみ認められた独自の酒。

3つの島とも、そこでしか造っていない独自の酒があるのが、
「世界の三大お酒の島」に認定する理由。

 

偶々、3つの島はサイズもとても似ています。

  マデイラ島
7.4万ha、最高峰1,862m、北緯32度、人口25万人

  アイラ島
6.2万ha、最高峰491m、北緯55度、人口3,400人

  奄美大島
7.1万ha、最高峰694m、北緯28度、人口7万人

ただ、上記のように自然条件や人口は大いに異なりますが。

 

マデイラも、
アイラのスコッチも
小さな島から世界を相手にお酒でビジネスをしている。

 

マデイラ酒の年間販売は総額1,790万ユーロ。
(1ユーロ=130円換算で約23億3,000万円)
うち、輸出が1,350万ユーロ、国内向けが440万ユーロ。
(2014年の数字、マデイラ酒の属する協会IVBAMによる)

 

一方アイラ島のウイスキーは、8社のうち5社が世界大手傘下で、

  ボウモア(サントリー傘下)
ラフロイグ(サントリー傘下)
ラガヴーリン(ディアジオ傘下)
カリラ(ディアジオ傘下)
アードベッグ(LVMH‐ルイヴィトンモエヘネシー‐傘下)

と、数あるスコッチの中でも世界に冠たるブランド。
アイラ島としての出荷統計はないが、
マデイラ酒以上に外貨を稼いでいるのは間違いない。

 

(なお因みに、マデイラの7社のうち1社、バーベイトも
日本の木下インターナショナルが株の50%をもつ。
マデイラ島でもアイラ島でも日本人ツーリストは希だけれど、
日本と大いに関係がある島であると言えます。)

 

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奄美大島と奄美列島(喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)の黒糖焼酎は、
酒税法上はアメリカから日本に復帰したときに始まったので、
マデイラやスコッチほどの歴史はないが、
ラム酒と違ってブロック状の黒糖から造るし、
米麹を使うという、世界に類がないお酒。

「税法上焼酎にするため形だけ米麹を使っていて原料の大部分が黒糖」、
と記載している文献もあるけれど、
実は3割、4割といった高い比率で米麹を使っているものがあること、
米麹由来の特徴が蒸留後も色濃く残っていること、
(黒糖比率が高いとまろやかさに欠ける)
など、奄美に来て初めて知りました。

 

黒糖焼酎は、日本だけでなく、
世界市場でポテンシャルがあるように思います。

 

 参考:以前、アイラ島に行ったときの資料に、
「アイラと奄美の比較」を書いています。
http://www.kitasangyo.com/Archive/Data/Islay_whisky.pdf

 

             (text = 奄美大島にて、喜多常夫)

 

 

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さて、情報紹介です。
今回は、ワインに関連した情報です。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その1:YouTube動画 ●▲■

「PEQI」ワインのスクリューキャップのスカートカッター
https://www.youtube.com/watch?v=i5mFRyIquGI

スクリューキャップのワインびんを開けると、
びん首部分に「筒状のアルミ(スカート)」が残ります。
ガラスびんの分別リサイクルのために、
ワンプッシュでスカートを切断する器具です。

きた産業製。「うぇぶ・びん屋」で販売しています。
http://web-binya.online-store.jp/

 

 

●▲■ ご紹介情報 その2:パッケージデザインアーカイブ ●▲■

ワインびん、コルク、ラベルなどをご採用いただいた事例

http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_235.2.pdf
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_235.1.pdf
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_239.2.pdf
http://www.kitasangyo.com/Archive/PDA/PDA_239.1.pdf

 

 

輸入びん、国産びん、天然コルク、合成コルク、
ステルヴァン、自社製キャップ、キャップシュールなど、
あらゆるワイン用資材に対応します。

ラベルは、関連会社の株式会社DKプリントが対応します。

 

 

●▲■ ご紹介情報 その3:K2ディビジョン ●▲■

シャンパン壜と関連資材
http://www.kitasangyo.com/Products/Data/closure/champagne_shizai_wop_0804.pd
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スパークリングワインのための
びん、コルク、ミュズレ、キャップシュールなど
様々な資材を小ロット対応で供給いたします。

 

 

 

 

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●▲■バックナンバー閲覧可能!「メルマガ・クロニクル」

http://www.kitasangyo.com/Archive/mlmg/BN_top.html

2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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2006年4月の以来、きた産業のトピックスを写真で収録。
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