●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.242 ●▲■
発行日:2018年7月2日(月)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 http://www.kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 「プラネットか、プラスチックか」
▲● 日本は「海洋プラスチック憲章」を採択せず
●■ プラスチック規制のグローバル動向の整理
■▲ 環境とプラスチックに関する4つのエピソード
「モロッコ」「シアトル」「ハワイ」「1996年までの日本」
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 新製品、半自動4ヘッド充填機「サケ・フロイント」
ご紹介情報●2▲ CDa社のタックラベラー、ワイン用キャップシューラ―つき
ご紹介情報●3▲ クラフトビール醸造所リスト更新、全国365か所掲載
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今回はお酒ではなく、プラスチックの話。
メルマガ読者や、当社製キャップをご利用いただいている酒類業界の方は
関心のある方が多いと思い、
関連情報や、個人的エピソードをまとめてみることにします。
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「マイクロプラスチック」による海洋汚染の報道が最近とても多い。
たとえば6月20日の日経夕刊では、一面トップで
「脱プラ食器 欧州加速」と伝えた。内容はこんな具合。
「マクドナルドは英国とアイルランドの全店で
ストローをプラスチックから紙製に順次切り替え
同社の2カ国のストロー消費量は1日で180万本」
「エリザベス女王はバッキンガム宮殿やウィンザー城で
使い捨てのスプーンや容器の使用を禁止」
「少なくとも毎年800万トンのプラスチックが海に流入
このままだと2050年までに海に漂うプラスチックの総重量が
海の魚の総重量を上回る」
そして、それまで私は知らなかったのだけれど、
小さな囲み記事で以下の紹介もあった。
「6月上旬のカナダのG7(主要7カ国首脳会議)で
欧州勢とカナダは「海洋プラスチック憲章」を採択したが
米国と日本は採択を見送った」
(注)「マイクロプラスチック」
いまや全世界の海洋中に存在する「小さなプラスチック粒子」。
従来は釣り糸や魚網など「大きなプラスチック」が問題視され、
魚や鳥が絡まったり喉に詰まらせることがよく取り上げられていたが、
より大きく、深刻な問題とみなされている。
海に流れ込んだプラスチックが破断を繰り返し生成されるほか、
一部のスクラブ洗顔料や工業用研磨剤など、
最初からマイクロプラスチックを含むものもある。
魚に蓄積され、魚を摂取した人間の健康被害が懸念される。
ナノレベルになれば細胞壁を通り抜ける。
空気清浄機メーカーのサイトを見ると、家庭空間にも浮遊するそう。
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「プラネットか、プラスチックか(PLANET OR PLASTIC?)」
地球という惑星(プラネット)をとるか
プラスチック(の利便性)をとるか
これは、一般向け科学誌「ナショナル・ジオグラフィック」誌の
先月号(2018年6月号)の、
「プラスチックによる海洋汚染の特集記事」の英語版タイトル。
(日本語版のタイトルは「海を脅かすプラスチック」)
この特集記事には、見開き2ページで大きく
「大量のコカ・コーラのキャップ」の写真が掲載されていて、
(ガラスびんの王冠ではなく、PETボトルのプラスチックキャップ)
そのキャプションを読むと
「世界各国の海岸に捨てられていたキャップ」なのだそうだ。
日本を含む多くの国名(拾った国)がぎっしり書きこまれている。
プラキャップが海洋汚染の要因の一つであることを雄弁に物語る写真。
また、
南太平洋の絶海の孤島、ヘンダーソン島という「無人島」の海岸で
ゴミを拾い集めたところ5万3,000個もあった、
そのゴミを分類してみた、というイラスト記事もある。
5万3,000個の99.99%がプラスチック。
破片や板状のものなど、
原型や用途が分からないプラスチックが圧倒的に多いのだけれど、
形をとどめているものは、多いもの順で
漁業用のひも・ロープ 3,336個
ストラップ 642個
プラキャップ 486個
だったそう。やはりキャップが登場する。
プラスチックボトル(115個)よりキャップが多い。
当社のコア事業は、キャップ製造。
PETボトルのプラキャップは製造していないが、
大いに考えねばならない状況だ。
現在、各国が制限しようとしている(すでに制限している)のは、
▲レジ袋、プラコップ、プラ・スプーン・フォーク、ストロー、など
だが、
■PETボトル、そのプラスチックキャップ、など
も、減らす努力をする(もちろんリサイクルや焼却は徹底する)必要がある。
あらゆるキャップには、
ほぼ必ずプラスチックが使われることも留意しなけれなならない。
金属キャップでも、密封(パッキン材)のために
LDPEなどのプラスチックを使うのが通例である。
(キャップに限らず、紙製や金属製のパッケージといえども
何らかのプラスチックを使っている場合が多い。)
キャップ・栓のこの150年ほどの開発史は、
コルク→王冠→金属キャップ→プラスチックキャップ
であるけれど、
特にこの30年を見ると、
金属キャップから→プラスチックキャップに移行
という流れが鮮明。
■リサイクル:PETボトルのリサイクルのため金属キャップより好都合
■安全性:金属キャップは開封時に手指を怪我するリスクがのこる
■価格:金属キャップよりプラキャップが安価
というのがプラスチック化の主な理由だった。
しかし、今後は
■プラネット:海水(や地下水)の安全性確保
も十分以上に考慮しなければならない。
注:「地下水」:近年、清酒などの酒類業界で、
アメリカ輸出で話題になるカリフォルニア州の規制
「プロポジション65」(BPAやフタル酸などの規制)は、
元々、水源や地下水のための規制である。
「リサイクルやゴミ回収のシステムが確立している日本は
海への廃プラスチックの流入リスクが少ない」
というのは「一国事情(ローカル事情)」としてはベターではあるけれど、
海は「グローバル事情」で動いている。
経済はますますグローバル化するが
海は経済以上にグローバルである。
海を通じて、世界はつながっている。
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ナショナル・ジオグラフィック誌の記事の引用を続けます。
プラスチックの世界総生産量の推移のグラフが掲載されていて
直近データの2015年は、4億0,700万トン。
(体重60Kgの人間に換算すれば、驚くべし58億人分!)
その内訳は:
パッケージ: 1億4,600万トン(6ヶ月未満)
建設: 6,500万トン(35年)
繊維: 5,900万トン(5年)
その他(農業用など): 4,700万トン(5年)
消費財: 4,200万トン(3年)
輸送: 2,700万トン(13年)
電気: 1,800万トン(8年)
工業機械: 300万トン(20年)
合計 4億0,700万トン
パッケージ用途が圧倒的に多いことが分かる。
パッケージの内訳の記載はないが、たぶん、
PETボトル
プラスチックトレー(スーパーに並ぶ野菜や肉類のトレーなど)
プラ食器(ファーストフード店のコップ、スプーンなど)
レジ袋
が、世界4大アイテムではないか。
日本では、コンビニ弁当やカップ麺の容器も大きいだろう。
( )書きは平均的使用期間だが、
パッケージ用途は他に比べ圧倒的に短い。
故に海などへの環境放出リスクも圧倒的に高い。
実際に目的用途に使用される期間は、多くの場合、
▲キャップやボトルで数か月
▲野菜などの食品トレーで数日
▲コンビニ弁当容器や食肉トレーで1日以下
▲レジ袋、プラコップ、プラ食器などは30分以下
だろう。嗚呼。。。
プラスチックが発明されて150年ほど。
化石燃料からプラスチックが合成されたのは100年余り前。
工業的大量生産が始まったのは戦後からの60年ほど。
「プラスチック」は、
「インターネット」に似ていると思う。
プラスチックのほうが普及速度はやや遅いが、どちらも
「無から始まって、爆発的に人類全体に普及」した。
「無し」では、いまや人類は暮らせなくなってしまったが、
どちらも使い方をコントロールしないと、
人類存続にかかわるように思う。
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関連した、
個人的エピソード3つ+記録しておきたいエピソード1つを
書いておきます。
●▲■ <個人的エピソード1、モロッコにて>
地中海の出口、ジブラルタル海峡をはさんでスペインの対岸の、
モロッコを旅行したことがある。
アフリカでは先進国で、宿泊施設もきちんとしている。
イスラム国だが、非イスラムの人にとって旅しやすい。
とても美しい、異文化の国。
カサブランカ、フェズなど観光地はきちんときれいにしてある。
が、少し都市部から離れた、砂漠のような場所を車で走ったとき
プラスチックの袋(いわゆるレジ袋)が大量に散乱し、
異様に風に舞っている風景に驚いた記憶がある。
きけば、
モロッコにはごみを燃やす設備が存在しない(旅した6年前時点)
ゴミ回収システムのある都市部は埋め立て
ゴミ回収システムのないローカルでは家の周りに放置
なのだそうだ。
埋立地は飛散防止も考えているだろうけれど、
家の周りに放置されたプラスチックゴミ、
特にレジ袋などはあらゆる場所に飛散するのは必然。
地中海にも大量に飛んでいくだろう。
海洋プラスチック憲章に最も前向きなのはヨーロッパ先進各国だが、
ヨーロッパだけでは地中海のプラスチック汚染は止まらない。
●▲■ <個人的エピソード2、シアトルにて>
先月、アメリカ西海岸に行ったのだが、
シアトルの空港での話。
ゴミ箱は二つに分けられていて、それぞれに
「MIXED RECYCLING」(びん、缶、プラボトル)
「TRASH -> LANDFILL」(ごみ -> 埋め立て)
と大書してあった。
日本では多くの普通ゴミは「燃やす」ものと相場が決まっているが、
アメリカを含め多くの国で燃やさず「埋め立てる」のだと
改めて認識させられた。
(燃やすのは環境に良くないと考えていることもあるだろう)
ワシントン州シアトルはアメリカで最も住みたい都市1位で、
プラスチックストローを禁止するなど
環境にも先進的な取り組みをしているが、
ゴミは埋め立てるのだろう。
埋立地からは、袋やフィルム類の飛散やもあるだろうし、
地下水への浸み出しもあるだろう。
先述したが、酒類業界で話題になる
カリフォルニア州の規制「プロポジション65」
は、元々、地下水のための規制である。
海中と違ってプラスチックは漂いはしないが、
溶出する化学物質は地下水に流れ込む。
当社を含むパッケージ業界がよく問い合わせを受ける
BPA(主にプラスチックを硬くする添加物)
フタル酸(主にプラスチックを柔らかくする添加物)
は、有害である可能性が高いとして、表示や規制の対象になっている。
(参考:最近のREACH規制やRoHS規制についてはアップデートしていないが、
下記にBPAとフタル酸の一般情報を記載しています)
http://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/caps-and-corks/bpa2016.pdf
●▲■ <個人的エピソード3、ハワイにて>
昨年、ハワイのJoy of Sakeに行ったときの話。
ホノルルで3泊、島の北部で2泊した。
ホノルルの3泊は日本人家族旅行ご用達の大型ホテルに泊まったのだけれど、
部屋には自動的に毎日2本の500mlPETボトル入りの水がサービスでおかれる。
常夏のハワイで 2 本では足りないから、
毎日ホテルのコンビニ売店で何本か買い足したのだが、
多くの宿泊客も同じ様子だった。
これは 1,700 室ある巨大ホテル。
1部屋3本としても、1日5,100 本、
1年186万本(!)の プラスチックボトルのゴミが出る勘定。
(連想:ホテルの使い捨て歯ブラシは日本では当たり前だが、外国では異例。
歯ブラシのプラスチックゴミの量は、日本が突出しているだろう。)
ホノルルの後、島北部のホテルに移動した。
部屋に入るとPETボトル入りの水はなくて、水筒がおいてあった。
「再利用可能な水筒。飲み口のフィルムの封を切ったら
5ドルチャージされます。これを購入すると、
当ホテル内に多数ある給水ステーションで自由に水をくんでいただけます。
この島の美しさを保つために協力頂きありがとうございます」
と、首かけに書いてある。
PET ボトル入りの水は1本1~2ドル。
5ドルであれば十分元が取れるし、
そしてもちろん、PETボトルのゴミが出ない。
このホテルでは、売店でも PETボトル入りの水は一切販売していない。
近くにゴルフ場やテニスコートがあるが、そこでもPETボトルの水は販売していない。
その代わり各所に給水ステーションがあって、皆さん、自由に水をボトルに入れている。
お陰で、このホテル一帯では PETボトルのゴミはほとんど出ない。
こんなメッセージも見かけた。
「REFILLS, NOT LANDFILLS」
(埋め立てゴミを出さない、マイボトルにリフィルしよう)
「アメリカ人は1時間に300 万本のボトル入りの水を消費、水道水にかえろう」
日本でもやるべきだと感じた。
●▲■ <記録しておきたいエピソード:日本>
もう知らない人も多いと思うが、
20年余り前まで日本には1リットル以下のPETボトル飲料がなかった。
日本でPETボトルを清涼飲料用に使用することが認められたのは1982年。
大手ブランドから次々と1.5リットルなど大容量の商品が市販された。
しかし、1リットル以下の小容量PETボトルは
「散乱ゴミを増やす」
「使い捨てがあまりにももったいない」
という理由で、
(中小分野であるラムネ用などを除き)使用が禁止(自主規制)されていた。
しかし、海外では小容量PETボトルがどんどん普及するという事情もあり、
日本でも1996年に小容量が解禁された。
以来20年余り。
コンビニに行けばわかる通り
今では1リットル以下のPETボトル商品が大半で、
その分、消費されるボトルの本数は多くなる。
もし、日本が「小容量PETボトル禁止」を継続していたら、
今頃、世界の注目を浴びる環境先進国になっていたかもしれない。
text = 喜多常夫
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さて、情報紹介。
●▲■ご紹介情報 その1 ROOTSディビジョン ●▲■
サケ・焼酎・ワインの多品種小ロット対応
新製品、半自動4ヘッド充填機「サケ・フロイント」
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/sake_freund.pdf
今までになかった4本ヘッド半自動充填機。
各ヘッドごとの充填量はタッチパネルから独立に設定可能。
ルーツ機械研究所製です。
ビデオもあります。(58秒、先日のFOOMA展示会で撮影)
https://www.youtube.com/watch?v=5TJOvJFWihw
●▲■ご紹介情報 その2 ROOTSディビジョン ●▲■
フランスCDa社のタックラベラー「ESSENTIAL」
オプションのキャップシューラ―つき
ビデオでごらんください。(52秒、先日のFOOMA展示会で撮影)
https://www.youtube.com/watch?v=qxQv9Qw7Rjw
「ESSENTIAL(エッセンシャル)」は、
日本で一番多くご使用いただいている「ニネットAUTO」の上位機種で、
キャップシューラーの取り付けが可能。
カタログが間に合っていませんので、
以下は「ニネット」シリーズのものです。
http://www.kitasangyo.com/pdf/machine/seamer-capper-labeler-etc/NINETTE_labeler.pdf
●▲■ご紹介情報 その3 アーカイブ情報 ●▲■
全国のクラフトビール醸造所リスト、365か所掲載
http://www.kitasangyo.com/beer/MAP.html
1995年の地ビール解禁以来、24年間継続して、
全国の醸造所の開業・閉店状況を記録しています。
2018年6月時点でリストを更新しました。
クラフトビールの資材・設備のことなら、
きた産業にご照会ください。
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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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