●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.282 ●▲■  
発行日:2021年10月12日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com


------------------< 目 次 >------------------

●▲■ (周年記念の連載)「酒類業界の30年を振り返る」 

<ウイスキー編>
■ 戦後、需要が反転した初めて・かつ・唯一のお酒
■ コロナも味方した? 2020年、輸出金額は日本酒を追い越す
▲ 前回の「ワインの30年」に関する修正情報

text = 喜多常夫


ご紹介情報●1▲ 開催中のお酒に関する展示会情報・4つ+おまけ
ご紹介情報●2▲ 10月15日(金)17:00から30分
中央会の「日本酒フェアON LINE」にて、喜多の講演
             「海外の清酒生産とクラフトサケ事情」



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>>>30年を振り返る・ウイスキー編<<<



●▲■ 戦後、需要が反転した初めて・かつ・唯一のお酒


各種のお酒の戦後の消費量をグラフにして見ると、
ある年まで増加、ピークとなりその後反転・減少している。

典型的な「ライフ・サイクル・カーブ」で、単純な山形である。
減少しだしたら、再び増加する(もう一度、山ができる)ことはない。

増加のピークの年を10年単位に丸めて言えば:

清酒 = 1970年
ウイスキー = 1980年
ビール = 1990年
ビール類(発泡酒・第三含む) = 2000年
本格焼酎・泡盛 = 2010年

不思議だが、10年ごとに、順次、いろいろなお酒のピークがあった。

将来の事はわからないが、

RTD = 2020年
日本ワイン = 2030年

ではないか、と思っている。
(RTDはまだ伸びているが、あと2-3年でピークアウトする
→10年単位に四捨五入すると、2020年がピークになる、という予測)


ピークを過ぎた後、清酒、ビール、焼酎は減少を継続したまま。
ところが、ウイスキーは、初めて、また、唯一、増加に反転した酒類である。
反転を示すため、30年ではなく50年の推移を書くとこんな数字。


●■国産ウイスキーの国内市場、50年の推移

1970年    13.0万KL
1980年    33.2万KL(増加のピーク)
1990年    16.0万KL(減少)
2000年    11.0万KL(減少)
2010年     8.1万KL(減少)
2020年    13.9万KL(再度、増加に転じた)

ピークは、正確には1983年の37.9万KL。
石でいえば210万石。コロナ禍での直近の清酒消費量に近い。
当時は確かに私もよくウイスキーを飲んだ。


1980年代後半、ウイスキーが減少に転じた理由はいろいろあったが、
重要な要因は「安くなったこと」だと考える。
英国サッチャー首相の要請もあって1989年に酒税法が変わり、
特級~2級の級別が廃止され、リッターxx円という重量税になった。

輸入ウイスキー価格は下がった。
英国の思惑ではスコッチはどんどん売れるはずであった。
が、豈図らんや(あにはからんや)、、、

酒税変更前、ジョニ黒(ジョニーウォーカー黒ラベル)は7~8,000円、
オールドパーやシーバスリーガルは1万円くらいだったと記憶するが、
並行輸入業者の出現もあって価格は急落、
一気に3,000円前後になった。

ウイスキーからプレミアム感が消失し、
高価であったが故の贈答品需要が消えた。
そして国産ウイスキーの需要も減っていった。

たとえ話で言えば、
もしも、ルイヴィトンやシャネルが製品価格を1/3にしたら、
コアなファンの人は買わなくなるのではないか。
ウイスキーには、それと似た性質があると思う。


「価格を下げれば売れなくなる」、すなわち
酒類には「価格の逆弾力性」があるという意外な特質については
30年メルマガの第一回(メルマガ・ニューズ vol.274)で書いた。

確かに「価格の安いもの」は増える(売れる)のだが、
一方で「全体の量」を減らす、という意味で「価格の逆弾力性」。

清酒やビールでも同じである。
価格の安い「清酒紙パック」や「第三のビール」はよく売れてシェアを伸ばすが、
清酒の総量や、ビール類の総量が減少する。


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清酒、ビール、ビール類、本格焼酎の需要は今も減少を続けるが、
ウイスキーの需要は2010年代に反転して、増加に転じた。

他の酒類でも短期的な上下動(例:ワインでミレニアム特需→減少→増加)はあるが、
「10年単位で見て反転」した、初めての酒類である。

反転した理由は、
サントリーさんの「ハイボール」の根気強いマーケティングもあるし、
世界的な「シングルモルト」ブーム(それ以前はブレンデッド)もあるけれど、
「日本ウイスキーの世界における高評価」が圧倒的に大きいと思う。

日本ウイスキーのプレミアム感が、市場を反転させた。

ここでも「価格の逆弾力性」がみられる。
賞をとったようなプレミアムウイスキーは当然とても高価。
「価格の高いもの」は富裕層やマニアのもので、
実際はそれほど多く売れるわけでもないが、
一方で日本ウイスキーのイメージを改善し、
「全体の量」を増やす効果があったのだと思う。



なお、個人的な考え(希望も含む考え)だが、
今まで半世紀減り続けた清酒は、
今後10年以内(たぶん2020年代後半)にはウイスキーのように反転し、
2030年に第二のピークが来る、と思っている。





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●▲■ コロナも味方した? 2020年、輸出は日本酒を追い越す


●■ウイスキー輸出金額の30年の推移
(比較のため、清酒も併記)

1990年・・・  2.9億円 (参考・清酒 26.8億円)
2000年・・・ 35.8億円 (参考・清酒 30.1億円)
2010年・・・ 17.2億円 (参考・清酒 85.0億円)
2020年・・・271.5億円 (参考・清酒241.4億円)


30年の成長率は、
清酒:    26.8億円 → 241.4億円=9倍
ウイスキー: 2.9億円 → 271.5億円=94倍


世界的なウイスキーブームとタイミングがあったこともあるが、
日本ウイスキーが海外コンテストで高評価を重ねた結果、
日本のウイスキーの輸出は2015年前後から急成長、
2020年、ついに金額で清酒を追い抜いた。

2020年のCOVID-19もウイスキーに味方した。

例えばアメリカでは2020年、ビールもワインも減ったが、
唯一国内消費が伸びた酒類がウイスキーだそう。
ウイスキーは「家飲み」に好適なのだろう。

一方、アメリカは日本酒輸出1位の国であったが、
アメリカではSakeは「外飲み」(日本食レストラン需要)中心なので、
コロナでレストランが営業できず、日本酒輸出は金額・量とも大幅減となった。
(大幅減でも量は1位を継続してるが、金額では3位に転落)

コロナという突発事情を差し引いても、
世界における認知度や親しみやすさでは、
「サケ」より「ウイスキー」に優位性があるだろう。

日本政府の「農水・食品の2025年輸出目標額」も、

清酒=600億円
ウイスキー=680億円

と、日本酒よりウイスキーのポテンシャルを高く評価している。
日本酒の立場からは、ちょっと残念ではあるが。



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30年の推移の数字で、
ウイスキー輸出が2000年に35.8億円といったん増えているのは、
この頃、台湾で日本ウイスキーがブームとなったため。
35.8億円のうち、台湾向けが29.2億円(全輸出の82%)だった。

ひょっとしたら、この台湾の日本ウイスキーブームは、
台湾のウイスキー、KAVALAN設立(2006年)の動機になったかもしれない。

台湾では、日本酒ブーム(清酒輸出が最高になった1996年)の直後に、
TTL(元の台湾公売局)が清酒製造を「再開」した例もある。
(注:「再開」:日本統治終了後も台湾公売局は30年ほど清酒を造っていたが、
74年に中断。23年経過後の1997年に製造を「再開」。)


風が吹けば桶屋、、、ではないが、
ブームとは、意外な展開をもたらすものである。
末尾記載の、日本でウイスキー生産者が50を超えた事も、然りである。


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2020年のウイスキー輸出271.5億円の、
国別ランキングtop6は以下のとおり。

1.中国:79.4億円
2.アメリカ:63.5億円
3.フランス:27.7億円
4.オランダ:26.4億円
(注:オランダ向けの多くは、英国とEU域内への再輸出)
5.シンガポール:17.4億円
6.台湾:10.2億円
(注:台湾向けは、前述した2000年ブームの1/3)

アジア3か国+欧米3か国。バランスがいい。
6か国合計で224.6億円、全輸出の83%。



因みに清酒の2020年の輸出241.4億円の
国別ランキングtop6は以下のとおり。

1.香港:61.8億円
2.中国:57.9億円
3.アメリカ:50.7億円
4.台湾:14.3億円
5.シンガポール:11.1億円
6.韓国:9.8億円

不買運動で2年連続激減した韓国を含むアジア5か国
+欧米(アメリカ)1か国。アジア偏重が強い。
6か国合計で205.6億円、全輸出の85%。


清酒輸出に比べ、ウイスキー輸出の方が、
輸出先の安定感を感じる。


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日本ウイスキーの世界的人気は、
一気にたくさんのウイスキー製造者を生み出した。

ベンチャーウイスキーさんがポットスチルで蒸溜を開始したのが2008年。
その当時、ウイスキー生産者は19場程度だったが、
2021年の今現在、50場以上に急増した。
ポットスチルのない生産者も含まれる。

そのあたりの事情は次回に書きます。

text = 喜多常夫


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●▲■ 前回の「ワインの30年」のメルマガの修正など


「スパークリングワインの30年」で、

シャンパーニュ・スタイルのスパークリングワインを造るのは
30年前の1990年、日本ではたぶん、タケダワイナリー1社だった。
2000年時点では4社(タケダ、池田町、ココファーム、機山洋酒)。

と書いたが、以下のご指摘をいただきました。

「池田町・十勝ワイン:1985年からスパークリングワインを販売」
「マンズワイン:当初は小諸のショップ限定だったが1992年から販売」

調査不足をお詫びし、訂正させていただきます。

また、日本のワインのキーパーソンとして、
麻井宇介さん、山本博さん、玉村豊男さんの3人を書いたが、
「山梨大学教授だった小原巌さんを書くべき」
いうご意見があったことも記録します。

日本のワインのキーパーソンは他にもたくさんおられ、
すぐに何人かのお名前が思い浮かびますが、意見も分かれると思い、
メルマガの話の流れにかかわる3人のお名前を書いたものでした。

ただ、私は小原巌さんを知らなかったので、ここに記録するものです。
1940年代から60年代にかけて、微生物やワイン醸造の著作や研究があり、
1956年の葡萄酒技術研究会の設立にも尽力された、とのことです。



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さて、ご紹介情報です。



●▲■ ご紹介情報 その1  お酒関連の展示会 ●▲■ 


開催中のお酒に関する展示会情報・4つ+おまけ:

●「酒票の美-サケノラベル」 展 
11月7日まで、広島・筆の里工房
明治の木版ラベルから昭和の一升びんラベルまで、お酒のラベルの展示
今はなくなった蔵元のほか、
戦前の樺太や朝鮮の蔵元、戦後の米国や韓国の蔵元のラベルもあるそう

●「うま酒の国 大和」 展
11月23日まで、奈良県立万葉文化館
奈良・大和を中心とした酒と神事や文化の展示

●「天之美禄 酒の美術」 展
11月14日まで、奈良・大和文華館
酒器や宴の絵画など、東アジアを含む酒の美術の展示

●「お酒でのぞくミクロな世界」 展+「躍動する人人」 展
11月23日まで、西宮・白鹿記念酒造博物館
麹菌や酵母の昔と今の比較、アニメ「もやしもん」とのコラボ展示
+錦絵や和本、掛軸といった絵画作品の中の昔の人々の様子

■(おまけ)→「酒王冠博物館 Museo Sake Futa」
https://kitasangyo.com/museo/museo.html
当社ウェブサイトの、
戦前から1980年代までの全国のお酒銘柄の王冠の、銅版のバーチャル展示。
長らく更新できていなくて恐縮ですが、ご自分の県など、ご覧ください。




●▲■ ご紹介情報 その2 「日本酒フェアON LINE」にて講演 ●▲■ 

日本酒造組合中央会の「日本酒フェア」が始まっています。
去年に続き今年もON LINEです。

10月15日の「中央会セミナー4」で、当社の喜多が話します。

10月15日(金) 17:00~17:30
「海外の清酒生産とクラフトサケ事情」
喜多 常夫
日本酒学研究会・きた産業㈱ 代表取締役

【概要】
海外で消費されるサケの総量は年間40万石程度。
うち日本からの輸出は約3割で、残り約7割は海外製。
現在、16か国に60のサケ生産者がいる。
急増するクラフトサケ醸造所を含む海外事情を写真や図表で解説。


当日の時刻になれば、下記からYouTubeチャンネルに接続できます。
https://www.japansake.or.jp/sake/fair/event/index.html




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