●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.284 ●▲■
発行日:2021年11月30日(火)
■アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
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●▲■ (周年記念の連載)「酒類業界の30年を振り返る」
<焼酎・泡盛編>
■ 「甲類から本格へ」+「麦から麦&芋へ」の30年
■ 「原料多様性」→「原料間競争」が本格焼酎の強み
■ 焼酎1,614円vs清酒875円(1.8Lの小売物価統計)
text = 喜多常夫
ご紹介情報●1▲ 「清酒・焼酎のキャップのバリエーション事例」
ご紹介情報●2▲ 「47都道府県の酒造所数」のマップ
ご紹介情報●3▲ 日経新聞の記事「地ビール、流行から産業へ」で、
「全国版」と「すべての地方版」が、きた産業データを引用
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>>>30年を振り返る・焼酎・泡盛編<<<
●▲■ 出荷量の30年 ●▲■
●■本格焼酎の課税移出、30年の推移
1990年 131万石
2000年 187万石
2010年 282万石
2020年 229万石
●■うち、泡盛の課税移出、30年の推移
1990年 7.2万石
2000年 11.6万石
2010年 12.3万石
2020年 7.7万石
本格焼酎全体の最高出荷(ピーク)は、2007年の316万石。
2020年は、ピークの約70%にまで減った。
2020年の減少分のうち数%はコロナの影響だろうが、
減少局面にあることに変わりない。
泡盛のピークは、2004年での15.3万石。
2020年はピークの約50%。
本格焼酎全体に比べ、ピークが3年早く、減少度合いも大きい。
前回の、「ウイスキーの30年メルマガ」で、以下のように書いた。
不思議だが10年単位で、順次いろいろなお酒のピークが来た、
増加のピークの年を10年単位に丸めて言えば:
清酒 = 1970年
ウイスキー = 1980年
ビール = 1990年
本格焼酎・泡盛 = 2010年
本格焼酎・泡盛の国内市場は、他酒類と同じく縮小しつつあるが、
ピークを迎えたのが一番最近であることは強み。
量的な勢いがあるし、
ウイスキーのように「第二のピーク」を目指す戦略、あるいは
ワインのように「波型成長」を目指す戦略、などが立てやすいと思う。
清酒のように、50年間減り続けて、ピーク時の1/4にまでなると
戦略が立てづらいと思う。
(注)戦後の需要変化を「ライフサイクルカーブ」的に見ると:
●清酒やビール:「単純山形」で、ピーク後、今までのところは減る一方
●ウイスキー:「2つ山型」(1980年に大きな山・2020年に小さな山)
●ワイン:増減する「波型」で、波を描きながら、まだ漸増局面にあると思う
●■比較のため、甲類焼酎も見ておくと、、、
1990年 187万石
2000年 202万石
2010年 223万石
2020年 168万石
冒頭に書いた本格焼酎の数字と比べると、
20世紀は「甲類が強い時代」だったが、
21世紀は「本格焼酎(乙類)が強い時代」になったことが分かる。
国税庁の公開統計には、甲と乙の数字しかない。
21世紀に登場した「麦や芋の甲乙混和」の統計上の扱いを知らないのだが、
もし「甲と乙の成分比率でそれぞれに計上」だとすると、
2010年や2020年の甲の数字には、甲乙混和分が相当量が入っているだろう。
という事は、数字以上に、麦や芋=本格焼酎型の人気が高いといえる。
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●▲■ 原材料変化の30年+大手集約の30年 ●▲■
●■本格焼酎のジャンル別出荷、30年の推移
1990年 麦:41% 芋:22% 米:7% その他:30%
2000年 麦:54% 芋:19% 米:17% その他:10%
2010年 麦:42% 芋:42% 米:10% その他:5%
2020年 麦:43% 芋:45% 米:8% その他:4%
21世紀に入って、芋の増加が顕著。
だが、麦も善戦。
直近の2021年前半は、麦が芋を逆転したようである。
(麦の方が、巣ごもり・家飲み向き??)
もう少し長いスパン、半世紀単位で俯瞰すると、
本格焼酎の需要には、3回の「波」、あるいは「ブーム」があった。
●1970年代・芋焼酎(薩摩白波、ロクヨンのお湯割り)
●1980-90年代・麦焼酎(いいちこ)
●2000-10年代・芋焼酎(霧島)
1回目のブームは、年齢的に体験していないのだが、
2回目・3回目のブームは、実体験したのでよくわかる。
本格焼酎では、芋、麦、米、そばなど「原料間競争」がある。
全体として成長してきたのは、原料間競争による切磋琢磨の賜物ともいえる。
もっぱら、麦と芋にスポットライトが当たるが、
30年を振り返ると、
そば、ゴマ、栗、米、黒糖、泡盛、などなど、様々なブームがあった。
様々な原料があるのは、他のお酒にない本格焼酎独特・固有の強みだと思う。
「ワインの30年メルマガ」では以下のように書いた。
かつて30年ほど前、(35年ほど前かもしれない、)
出張先で飲んだ酒の中で、
甲府で飲んだ甲州ワインと、鹿児島で飲んだ芋焼酎は、よくおぼえている。
個人的嗜好で恐縮だが、どちらもまったく「イタダケナイ」味だった。
ところが、
30年後の今、ワイナリー各社が造る甲州はどれも素晴らしい(中略)
芋焼酎もまた大きく変化して、飲みやすく、独特の魅力ある味になった。
素人の感覚だが、自分の体験として、
「いいちこ」や「二階堂」の麦を初めて飲んだ時、
「黒霧島」の芋を初めて飲んだ時は、
「これは今までと違う」、と思ったのを覚えている。
本格焼酎の品質は、この30年で大きく変わったと思う。
●■本格焼酎トップ2社のシェア、30年の推移
1990年 三和酒類:23% 霧島酒造:6% 2社で29%
2000年 三和酒類:22% 霧島酒造:5% 2社で27%
2010年 三和酒類:15% 霧島酒造:13% 2社で28%
2019年※ 三和酒類:15% 霧島酒造:20% 2社で35%
(※ 手元に2020年のデータがないので2019年を記載)
本格焼酎全体にしめるトップ2社の合計シェアは、この10年で一気に高まった。
(1990-2010年の合計シェアはあまり変化がないのは意外)
「麦焼酎における三和酒類のシェア」、
「芋焼酎における霧島酒造のシェア」、
という切り口で見ると、それぞれ40%弱、50%弱にまでなる。
●■参考に、清酒トップ3社のシェアの推移も見ておくと、、、
1990年 松竹梅:3% 白鶴:5% 月桂冠:6% 3社で14%
2000年 松竹梅:5% 白鶴:7% 月桂冠:8% 3社で19%
2010年 松竹梅:8% 白鶴:10% 月桂冠:8% 3社で26%
2020年 松竹梅:11% 白鶴:11% 月桂冠:8% 3社で30%
本格焼酎はトップ2社だが、清酒の場合はトップ3社。
清酒では30年かけて徐々に集約度は高まっているが、トップ3社で30%。
トップ2社で35%の本格焼酎は、清酒よりずいぶん高いと言える。
売上高や利益率も、本格焼酎トップは清酒トップよりずいぶん高い。
(松竹梅については、宝酒造としては圧倒的に大きいが、
清酒セグメントの売上や利益を見ると、という意味で)
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●▲■ 国内価格の30年 ●▲■
先週末の日経新聞11月26日の「九州・沖縄経済特集」の記事
「国内主要焼酎メーカーの2020年の業績は、
首位の霧島酒造や2位の三和酒類など、
売上高100億円を上回る6社のうち、
(コロナにもかかわらず)4社が増収となった。」
(余談だが、「売上高100億円の焼酎メーカー」は、
「国際会計基準では売上高70億円程度」になる。
日本の酒類企業の多くは「酒税込み」で売上を計上するが、
国際会計基準では「酒税抜き」。
25度の焼酎の酒税は450円/1.8Lと高い。
売上100億円が7万石程度とすると、酒税は30億円程度)
主要清酒メーカーや大手ビールは、2020年は、ほぼ全社が減収ではないか。
本格焼酎は、他酒類に比べて、コロナ禍で善戦しているといえる。
善戦の力になっている要素として、価格政策が大きい思う。
●■小売物価統計にみる焼酎の価格、30年の推移
1990年:1,090円(一升びん、甲類25度)
2000年:1,421円(一升びん、甲類25度)
2010年:1,691円(1.8L、容器指定なし、本格「麦」25度)
2020年:1,614円(1.8L紙パック、本格「麦または芋」25度)
●■参考に、清酒の小売物価統計を見ると、、、
1990年:1,450円(一升びん、2級)
2000年:1,663円(一升びん、佳撰)
2010年:1,104円(2L紙パック、普通酒)→1.8Lあたり994円
2020年: 973円(2L紙パック、普通酒)→1.8Lあたり875円
どちらも総務省統計局の小売物価統計で、「東京都区部」の数字である。
時代時代の主流品を観測するので、カッコ書きのように、
焼酎では、
1990・2000年は「甲類」、2010・2020年は「本格焼酎」、
2010年は「麦」、2020年は「麦または芋」
清酒では、
1990・2000年は「一升びん」、2010・2020年は「2L 紙パック」
とサンプル対象や量が変遷している。
すなわち同一スペック品の価格ではない。
が、カテゴリーの傾向はよく読み取れる。
少なくとも、焼酎の2010・2020年の1,600円台という価格は、
メーカーにとってよい価格(安売りでない価格)だと思う。
一方、清酒の2010・2020年の価格、
特に2020年の973円(1.8Lあたり875円)は、
いかにも安い(メーカーは利益が出しにくかろう)と思う。
30年前、清酒は焼酎より価格が高いのが当然だった。
今は、紙パックに限ると、清酒は焼酎の半値近いのが当たり前になった。
素人目でみて、一番わかりやすい違いはこれだろう。
■本格焼酎の1.8L紙パックは、メインブランドの1.8Lびん製品と同じもの
(「黒霧島」や「いいちこ」は、紙パックも1.8Lびんも同じブランド、同じ価格)
■清酒の2L紙パックは、1.8Lびん製品とは違う専用商品
(「まる」「月」「天」は経済酒専用ブランド、特売対象になりやすい)
以前も何度か書いた通り、お酒には「価格の逆弾力性」がある。
「安い製品」それ自体は売れてシェアは年々増えるのだが、
「安い製品を出すと当該酒類の全体量が年々減る」、という法則性がある。
本格焼酎は、
「甲乙混和の麦や芋」に相当なシェアを侵食されても、
対抗で安価な麦や芋を商品化しなかった(できなかった?)のは、
正しい選択だったと思う。
清酒の場合は、
アルコール添加技術が価格調整手段になったのかもしれない。
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次回は、焼酎・泡盛の輸出や国際化(が苦戦)の30年を書きます。
text = 喜多常夫
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さて、ご紹介情報です。
●▲■ ご紹介情報 その1 ●▲■
「清酒・焼酎のキャップのバリエーション事例」
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/sake-cap.pdf
KT+KS、AZK、jZK、MZK、スマートスクリュー、PPキャップなど、
選択肢の一覧資料です。
焼酎のグローバル市場を考える上では、
ウイスキーやワインのキャップ・バリエーションも参考にしてください。
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/Whisky-cap.pdf
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/wine-cap.pdf
●▲■ ご紹介情報 その2 ●▲■
「47都道府県の酒造所数」のマップ(全15ページ)
https://kitasangyo.com/pdf/archive/sake-info/pref.stat.2021.pdf
焼酎(が主力の蔵)333か所のほか、
清酒1,454か所、クラフトビール528か所、大手ビールの工場27カ所
ブドウのワイナリー378か所、シードル127か所などを県別に表示。
●▲■ ご紹介情報 その3 ●▲■
日経新聞の記事「地ビール、流行から産業へ」が、きた産業のデータを引用
https://kitasangyo.com/pdf/archive/adposter-library/NIKKEI_20211030.pdf
日経新聞の2021年10月30日の特集記事、「地ビール、流行から産業へ」で、
「全国版」だけでなく、同日の「14ある地方版の関連記事のすべて」で、
きた産業のデータが一斉に引用されました。
14の地方版の記事は、別々の記者が書く、バラバラの独立した内容です。
そのすべての地方版記事に、当社のデータが引用されるというのは
ちょっと珍しいし、大変光栄なことなので、
ポスターパネルに貼り付けてました。
拡大すると、記事が読めます。
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