●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.293 ●▲■

    発行日:2022年7月25日(
  ■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■

発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com



------------------< 目 次 >------------------


●▲■ 「カントリーリスク」と「フォースマジュール」

●ロシア・ミャンマーでの大手ビール撤退(連想:戦前の中国・朝鮮・台湾)
●ロシアvsフランス:コニャックの仇はシャンパンで?
●伝染病、輸送障害、原料調達障害、社会騒乱、、、フォースマジュールは増える
●Act of God(神業)からAct of Human(人類の営み)に?

text = 喜多常夫

ご紹介情報●1▲ 「サケびん口」の清酒・焼酎の事例(デザイン・レファレンス集)
ご紹介情報●2▲ 「紙カートン」と「クリアカートン」の汎用品カタログ
ご紹介情報●3▲ 卓上ビール充填機「BF」、「2+1」、「BB」



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30年近く前、初めて当社がアメリカに機械を発注したとき、
具体的には、クラフトビールではおなじみの「メヒーン」のビールびん詰め機を
1995年に初めて発注した時のこと。

数ページの英文契約書がファクスで送られてきた。(まだメールではなかった)
間違いがあってはならないと辞書を片手に英文をよく読むと、
こんな条項があったのが印象的で、よく覚えている。

「戦争、革命、洪水、火災、、、
Act of God(人知の及ばない神の仕業=天変地異など)が起こった時は、
納期が遅れたり、この契約自体が無効になることがある。
その場合の賠償義務や責任分担は売り手にはない。」

「戦争」「革命」「洪水」、、、起こりそうもないことも書くんだなあ、思った。
(「地震」は書いていなかった。1995年は阪神大震災の年であったし、
日本では洪水より地震だが、アメリカでは地震の序列が低いのだろう、とも思った。)


今は、メヒーンは、Wild Goose Filling社の一部門だが、
当時、メヒーン社は、クラフトビール醸造所から起業したベンチャーで、
Mr.メヒーンとMr.コリンズの若い2人でやっている町工場だった。
「小さな会社でも、契約書ではこんなことまで書くのがアメリカ流か」
、、、と思ったのを、覚えている。
(ドイツからも設備を買っていたが、そちらの契約書はもっとシンプルだった。)

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30年前、「戦争」「革命」「洪水」は先進国では起こりそうもないと思ったが、
今、「戦争」が世界を揺るがしている。
世界各国で起きるクーデターや内乱・内戦は、いわば「革命」の範疇だ。
「洪水」も世界各地で常態化してきた。



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●▲■ カントリーリスク:ビールの事例 ●▲■ 

以下、「ビール」における、戦争やクーデターの影響事例を見る。


<<ロシア>>
※2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻開始

3月28日、オランダの「ハイネケン」(世界2位)は、ロシア事業からの撤退を発表。
撤退には4億ユーロ(約540億円)の費用がかかるが、
「ロシアでの事業保有は持続可能でも実行可能でもないとの結論。
従業員1,800人の給与は2022年末まで支払う」、と表明。

同日、デンマークの「カールスバーグ」(世界3位)も、ロシア事業から撤退を発表。
ロシアビール大手のバルティカに出資していて、
2021年、ロシア事業の売上は全売上の1割、
65億デンマーククローネ(約1,200億円)にのぼる。
しかし、「困難な決断だが現在の環境下、正しいことだ。」と表明。
(ハイネケンとカールスバーグ、日経新聞2022年3月29日)

マクドナルドの撤退で閉鎖されていたロシア国内の店舗は、
ロシア資本が引き継いで、似たロゴでハンバーガー店を再開しているという。
ビールの場合も、ハイネケンやカールスバーグが撤退しても、
ロシアの消費者には大きな影響はないのだろう。
が、ハイネケンやカールスバーグにとっては、想定外の大打撃だ。



<<ミャンマー>>
※2021年2月1日、ミャンマー国軍がクーデター


2022年6月30日、「キリン」は、ミャンマー事業撤退を発表。
ミャンマー国軍系企業MEHLとの合併会社、ミャンマーブルワリー(MBL)の、
キリンが保有する株式をMBLに売却。
国軍と関係ない第三者への売却を模索したが難航、早期撤退を優先。
「MBLによる自社株買い(MBLへの売却)は考えられる中で最良の選択肢」
MBLは、クーデター前の20年はキリンHDの事業利益の1割を占めた。
売却額は224億円になる見通し。
(日経新聞2022年7月1日)


ハイネケン・カールスバーグ・キリンの事例は、
「戦争・クーデターで追い出された」のではなく、
「戦争・クーデター加担者に関係したビジネスの継続は他の顧客を失うので自主退場」
という民主主義陣営企業の良識の経営判断。
痛み(大きな損害)に耐えられる大資本の企業にしかできない判断であるが。

酒類ではないが、同じ視点で「サハリン2」を見ると、
「出資企業」は大資本なので、たぶん痛みに耐えられるのだと思うが、
「日本国民や企業」が痛みに耐えられないので踏み切れない、と言う事か。
(長年の交渉で権益を確保してきた「政治家」の思惑もあるのかもしれない)

だが、日本側の判断如何にかかわらず、
ロシア側から天然ガスの供給を止めそうである。
「自主退場」のビールと違って、「強制退場」を強いられそうな
状況だ。


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「戦争とビール産業」では、私は以下の歴史を想起する。
「日本がカントリーリスクだった」、と言える事例かもしれない。


<<中国>>
「青島ビール」は1903年、当時ドイツ租借地だった山東半島にドイツ人が設立。
1919年にヴェルサイユ条約でドイツの租借権を日本が引き継いだことに伴い、
青島ビールは「大日本麦酒・青島工場」(山東省青島登州路)となり、
札幌ビールや朝日ビールのブランドも製造したそうだ。
1922年に山東半島は中国に返還されるが、
青島ビールは大日本麦酒が終戦まで経営した。
敗戦に伴い中国国営となって、現在の青島ビール(世界6位)に至る。
(因みに、アサヒビールは世界7位である。)


<<韓国>>
戦前、日本統治下の朝鮮半島では、
麒麟麦酒が設立した「昭和麒麟麦酒」と
大日本麦酒が設立した「朝鮮麦酒」の2社があった。
(両社とも京畿道永登浦、1933年設立。同じ場所、同じ設立年。
戦前の朝鮮半島でビール製造を行っていたのはこの2社のみ。)
昭和麒麟麦酒はキリンビールを、
朝鮮麦酒は札幌ビールと朝日ビールを製造した。
日本の敗戦で、2社は韓国の事業家(後に財閥系になる事業家)が継承。
現在は、韓国1位と2位の、「OB-Cass」と「Hite-Jinro」になっている。


<<台湾>>
戦前の台湾では、「高砂麦酒」(台北市上埠頭町)が、
「台湾総督府専売局」の管理のもとビールを生産していた。
(日本国内の専売は塩・タバコなどだったが、台湾では酒や阿片も専売した。
高砂麦酒は台湾で清酒を造っていた民間企業が1919年に設立した会社だが、
1933年以降専売局の管理となった。
戦前の台湾でビール製造を行ったのは高砂麦酒のみ。)
日本の敗戦に伴い、戦後は「台湾公売局」が事業を引き継ぎ、
現在は民営化された「TTL台北啤酒(ビール)工場」になっている。
台湾では2002年のWTO加盟酒類製造のTTL独占がなくなり、
クラフトビール醸造所多数できているが、
工場規模のものはTTLだけで、
TTLが台湾最大のビール生産者である。



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コロナ前まで「カントリーリスク」の主要なものは、

■領土問題や歴史認識由来
(例:2012年の中国:暴徒が日系企業を襲撃
2019年の韓国:日本製品不買運動)
■大量輸出・現地雇用阻害などによる貿易摩擦
(例:1980年代のアメリカ:日本車不買・日本車を破壊)

など複雑な事情のものと思っていたが、今や

■戦争やクーデター
(例:2021年のミャンマー、2022年のロシア)

という、ある意味シンプルだが、決定的に重大なリスクが加わった。

政権や経済が不安定になっている先進国は多い。
カントリーリスクは、さらに増えるのだろう。



●▲■ カントリーリスク:コニャックの仇はシャンパンで? ●▲■ 


もう一つ、お酒に関するロシアのカントリーリスクを書いておく。


ウクライナ侵攻以前の2021年7月の事だが、
「『シャンパン』の名前を使えるのはロシア産だけ」
という耳を疑う法律にプーチン大統領が署名。
フランスは突然、シャンパンと表示した製品をロシアに輸出できなくなった。

(ロシアは長年、何の異論もなく、シャンパンの名のもとで輸入してきた。
なぜ突然こんなことをしたのか、正式には伝わっていないが、、、

「ロシア同盟国であるアルメニアのブドウの蒸留酒は高品質で有名、
長年にわたって通称「アルメニア・コニャック」で通ってきたが、
2021年6月、アルメニアEUからの財政支援を受ける見返りに
『コニャック』の呼称を使うのを正式に放棄することに同意」

   したことにプーチン大統領が反撃したのだ、という記事があった。
『コニャック』は『シャンパン』と同じく世界的に名称が保護されるが、
プーチン大統領は、
EU的価値観である「地理的名称保護(GI)」が気に食わない、
あるいは、EUやフランスのやり方が気に食わなかった、という事だろう。)


大手のLVMHなどを含むフランスのシャンパーニュメゾンは強く抗議したが、
ロシアは大口の需要家、市場を失うわけにはいかない、
仕方なく、ラベルを「スパークリングワイン」に替えて、輸出を続けていた。

しかしその数か月後の2022年2月、ウクライナ侵攻が始まって、
翌3月には、EU側がシャンパン(および、高級車、高級アパレル、
高級スポーツ用品など)のロシアへの輸出を禁止。

高級シャンパンは、もっぱらオリガルヒが愉しんでいたのだと思うが、
ロシアは、結局、シャンパンを買えなくなった格好。
フランスも、帝政ロシア時代から続く歴史ある市場を失ったことになる。




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●▲■ フォースマジュール ●▲■ 

契約書における「フォースマジュール(Force Majeure)」条項とは、
フランス語の「大いなる力」を語源とし、日本語では「不可抗力」条項。
一般的には「人の力ではどうすることもできない力や事態」を指します。

フォースマジュールという用語が近代の法令に初めて導入されたのは
1804 年制定の「フランス民法典(いわゆるナポレオン法典)」とされていますが、
3700 年以上前のハンムラビ法典や古代ローマの法令にも表れており、
古くから取引上の 1 つの論点となっていたことがうかがえます。

(「米国におけるフォースマジュール条項 -実務上の意義および留意点-」
2022 年6 月 JETROサンフランシスコ事務所のレポートから要約)


当社は様々な輸入品を販売しているので、海外との取引が多い。
海外取引の注文確定書(OC)には、ほぼ必ず基本販売条件が記載されていて、
機械に限らず、キャップ・ガラス壜などの資材でも、フォースマジュール条項がある。

冒頭に記した

●戦争 ●革命 ●洪水 ●火災
●Act of God

は、昔からあるフォースマジュール=不可抗力項目である。
しかしこれら以外に、最近の売買契約書ではフォースマジュールが増えている。
会社によって内容は違うのだけれど、具体的にはこんな項目が追加されてきている。

●伝染病拡大
●原材料調達の障害
●電力の不足
●輸送上の障害
●通信上の障害
●社会的騒乱

以上の項目は、3年前には書く人はほとんどいなかったと思うが、
以下のような、この3年ほどの世界状況に呼応して売り手側が追加し、
買い手側も認めざるを得なくなったものだと考えられる。

■COVID-19の世界パンデミックが3年目に突入
■電子部品や化学・金属材料が世界的に高騰・入手困難
■上海の2か月のロックダウンによる世界的混乱の体験
■石油や天然ガスの供給不足で多くの国が今後の電力不足を予測
■コンテナ不足と港湾処理能力不足で海上輸送が混乱
■アメリカの大手石油会社がサイバー攻撃で供給を一時停止
■フランスの黄色いベスト運動、香港の黄色い雨傘運動


カントリーリスクと同じくフォースマジュールも増えていくのだと思う。

今後は、世界的気候変動由来のフォースマジュール項目が加わるのではないか。
(酷暑・極寒・大雨などで社会・経済活動が阻害され、契約が守れなくなる)
各国のインフレや債務超過も重大な局面を迎えそうだが、
これも企業の責任を超えていて、フォースマジュールになりそうである


そもそも戦争やクーデターは「人間」の争いであるし、
今の世界的気候変動は「人間」の二酸化炭素の排出による。
21世紀になっても繰り返されるインフレや債務超過も「人間」の所業。


英語で、天変地異や予測不能の事は、
Acts of God(人知の及ばない神の仕業)というが、実は多くのことが
Acts of Human(人類の営みの結果)になった。




text = 喜多常夫



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さて、商品のご紹介です。


●▲■ ご紹介情報 その1  KK & K2情報 ●▲■
「サケびん口」の清酒・焼酎の事例(デザイン・レファレンス集)
https://kitasangyo.com/pdf/archive/package-designs/DRB22_sbk.pdf

KT+KS、AZK、MZK、jZKなどのキャップをご採用いただいた
「サケびん口」のびん商品の、10ページのデザイン・レファレンス集です。

 



●▲■ ご紹介情報 その2 K2情報 ●▲■
汎用品の「紙カートン」カタログ

https://kitasangyo.com/pdf/package/various-packages/dkp-carton_ed04.pdf

汎用品の「クリア(PET)カートン」カタログ

https://kitasangyo.com/pdf/package/various-packages/clearcarton.pdf

キャップだけでなく、紙カートン、クリアカートンもお任せください。
色々なサイズのびんに適応するよう、汎用品を多数準備しています。




●▲■ ご紹介情報 その3 ROOTS情報 ●▲■
卓上ビール充填機 「BF」
https://kitasangyo.com/pdf/machine/BFV.pdf

卓上ビール充填機 「2+1」
https://kitasangyo.com/pdf/machine/2+1filler_ed04.pdf
卓上ビール充填機 「BB」
https://kitasangyo.com/pdf/machine/BB_ed02.pdf

クラフトビールや研究所の卓上ビール充填機ではトップシェア。
電磁流量計による充填から手動操作まで、3つのレベルを準備しています。







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