●▲■ きた産業 メルマガ・ニューズ vol.315 ●▲■
発行日:2024年7月30日(火)
■ アルコール飲料産業のためのクロスオーバー情報 ■
発行:きた産業株式会社 https://kitasangyo.com
------------------< 目 次 >------------------
●▲■ 海外のパッケージ規制の動向<前編>
:EUのキャップやガラスびん規制について
● EUでは今月から「PETボトルから離れないキャップ」が義務化
● ビール缶の蓋サイズ:世界は202、日本は204と206
● ガラスびんリユース:「かつての日本のやり方」が脚光を浴び始める?
● 一時、「日本酒がEU で禁輸の危機」と報じられた根拠の新規則「PPWR」
text = 喜多常夫
ご紹介商品●1▲ サケびん口キャップ「AZK」がバイオ樹脂25%に
ご紹介情報●2▲ ウイスキー蒸溜所に「樽型量り売り充填機」
ご紹介情報●3▲ 半自動びん詰機「サケ・フロイント」(流量計制御)
と「ウイスキー/ジン・フロイント」(重量計制御)
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「キャップ」製造が当社のコア事業で、「ガラスびん」「アルミ缶」販売も大きな柱。
仕事柄、欧米のキャップ事情やびん・缶事情には敏感なのですが、
近年、日本と欧米の目指す方向性が、離れていくように感じます。
今回はEUのキャップやびん・缶の事情について書きます。
昨今、清酒、ウイスキーなど、日本酒類の輸出に際し、
現地規制適合の分析証明や宣誓書を求められる事が増えたので、
メルマガ読者にもご参考になると思います。
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日経新聞の第一面で、写真入り記事になったのでご記憶の方もいると思うが、
7月3日からEUでは、
3リットル以下のPETボトル(ミネラルウォーターやコカ・コーラなどが該当)に
「ボトルから離れないキャップ」が義務づけられた。
(日経新聞2024年7月2日、夕刊)
キャップを回して開けるのは従前と同じだが、
日本のお醤油PETボトルのキャップのように、
「ヒンジ」(蝶番、といったらよいか)でスカート部とつながっていて、
キャップはボトルにくっついたまま、という方式が一般的。
EUのミネラルWでは、1-2年前からこのキャップが増えだしたので、
ヨーロッパ出張で実体験しているが、
ご想像の通り、ボトルに口をつけて飲もうとすると、、、
くっついたままのキャップは本当に邪魔である。
まあ、、、慣れてしまえば支障なく飲めるのだが。
今回の「ヒンジキャップ規制」前(コロナ前の2019年ころ)の段階ですでに、
EU・日本で、PETボトルミネラルWのプラキャップの形状は相当違っていた。
15年ほど前は、EUのミネラルWのプラキャップと、
日本のミネラルWのプラキャップは、概ね同じようなサイズだった。
しかし、EUでは10年ほどでキャップはどんどん薄くなり、
全高9-11mmが一般的になった。
日本のキャップの半分くらいで、とても薄い。
ちょっと開けにくいが、プラスチック使用量は断然少ない。
日本でも「プラスチック使用量削減」は必須命題だが、
「開けやすさ」も重視するのでキャップ全高は今も19-20mmくらいを維持。
「高齢者がPETボトルのキャップを開けられない」、とはよく言われるところなので、
むべなるかな、、、とも思うが、サイズはEUのキャップに比べるととても大きい。
「プラスチック削減」というのは世界の共通課題だが、
日本とEUのキャップでは、相当違う結果になっている。
日欧とも軽くはなっているが、「比較すると日本は重たい」。(※)
EUでは規則でヒンジ付きキャップになっても、プラスチック削減が第一なので、
ヒンジなしより少し厚くなったが、それでも12-14mmと日本よりはるかに薄い。
全高が低くてキャップが離れないと、余計に飲みにくい。
しかし、EUでは現在、「飲みやすさ」より「環境対応」が優先する。
キャップ規制は、PETボトルだけでなく、紙容器も規制対象とのこと。
EUで販売される伊藤園の「おーいお茶」は、
日本からの輸出をやめて、
現地生産の、外れないキャップ付きの紙パックになった、と日経新聞の記事にあった。
(ヒンジ付きキャップ対応が可能な、テトラパック社が受託充填)
(※)ちょっと横道
「比較すると日本は重たい」、のもう一つの事例:「ビール缶の蓋」
ビール缶の胴径は世界中で211(2-11/16インチ)が標準。
(細かい話をすると、以前はアメリカのCoorsだけが異なる胴径をつかっていたが、統一された)
缶胴のネックイン技術がない時代は缶胴径と缶蓋径は同じ211だったが、
90~2000年代にアルミ軽量化のためにどんどん缶蓋の縮径化が進んだ。
EUもアメリカも、21世紀に入って202(2-2/16インチ)缶蓋が標準になっている。
今や、韓国や中国でも缶蓋は202だと思う。
ところが日本は、90年代半ばにキリンが206から204に変えてから30年間進んでおらず、
今も206缶蓋と204缶蓋が混在する、ガラパゴス状態。
202にすればアルミ使用量削減なるが、202に変わる気配はない。
これは、キャップのように「開けやすさ維持」といった高尚な(?)目的ではなく、
「202缶蓋の切り替え投資に踏み切れない」、という事情のようだ。
(切り替えには、製罐メーカーは金型投資、ビールメーカーは巻締機の変更が必要)
ビール系のアルミ缶は90億缶強(2023年)もの市場規模があるうえ、
多くのRTD缶、飲料缶も同規格なので、容器として断トツの量があるのだが、
それでも、人口減・飲酒量減で、日本の缶需要は今後減少する、
故に投資回収が難しい、、、というのが理由。
難しい問題である。。。
本論に戻って、EUの「ボトルから離れないキャップ」の続き。
日本ではミネラルWのキャップは、PETボトルから外れる(離れる)ものがほとんど。
(注:JR東日本が販売するミネラルWは例外で、離れないキャップを採用)
それに、PETボトルでもガラスびんでも多くの場合、
「キャップは取り外して分別廃棄(リサイクル)すること」が推奨されている。
お醤油など、多くのヒンジキャップは、使い終わったら取り外せる設計になっている。
アルミのスクリューキャップも、日本ではPPバンドが外れるようになっている。
(注:PPバンド部にスプリット(縦筋)が入っていて外れる国は珍しい。ほぼ日本だけ?)
清涼飲料のPETボトルでは、ラベルフィルムが剥がせるようになっている。
リサイクルのためには、PETやガラスをできるだけ単一素材として回収するのが有利だから。
一方、EUで「ボトルから離れないキャップ」規制を採用した最大の理由は、
「マイクロプラ」や「海洋汚染」の対策。
海岸で一番多いのはPETボトルのプラキャップなのだそうだ。
日本と違って、PETボトルのリサイクル率が低いこともある。
PETボトルの回収率は
日本80%以上、欧州40%程度、北米20%程度
と、愕然と違う。
客観的に考えると、
材質が異なるPETボトルとプラキャップ(ポリエチレンなど)を一体にしてしまうと、
マテリアルリサイクルにとても不利だが、
それより、ゴミとして捨てられることを防ぐことが、今のEUの優先事項になっている。
今年3月のメルマガで、アメリカの空港の国際線ターミナルで、
PETボトルのミネラルウォーター自体をまったく販売していないことを書いた。
アメリカでは、PETボトルを売らないホテルやスポーツクラブが増えている。
これも日本では考えにくい状況である。
国・地域によって、環境対応に対する対処方法や優先順位が異なる。
結果として日本と欧米では、規制の方向が乖離してきている。
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「ガラスびん」についても、日本と異なる方向性がはじまっている。
いや、「かつての日本のやり方」が脚光を浴び始める、というべきかもしれない。
以下、JETROビジネス短信2024年7月11日から。
フランス北西部、ブルターニュやノルマンディーなど4地域で、
1,600万人の消費者を対象に、
新しく、ガラスびんのリユース(デポジット制度)を試験的に導入。
具体的には「R-Coeur」と名付けた6種の統一びん
飲料用(1リットル、広口と狭口の2種)
ビール用(750mlと330ml)
食品用(720mlと450ml)
を作って、飲料・ビール・食品メーカーに共用を働き掛ける。
スーパーマーケットに回収装置を設置、
デポジット料金は20~30セント(30-50円)の予定。
コカ・コーラ、ネスレ・ウォーターズなどの大手飲料、
ハイネケンなどの大手酒類、
カルフール、ビオコープなどの大手流通が参加。
日本ではかつて、ビールびん、一升びん、牛乳びんなど、
多くのガラスびんがリユースされていた。
しかし21世紀になって、リユースびんは激減した。
(独白:フランスのように50円にしたら増えるかもしれない、と思った)
そもそも日本では、ガラスびん需要自体が減っている。
出荷量のピークは1990年の240万トンだったが、
以降ほぼ単調減少で、2023年は88万トンまで減ったそうだ。
(大手製壜メーカーが加入する「日本ガラスびん協会」分の統計。
1990年は、日本ではまだ小型PETボトルが規制されていて、存在しなかった。)
2023年の88万トンのうち、酒類向けは30万トンで、
本数で言えば8億本だそうだ。
(清酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーなどすべてを含んで8億本。
先に、「ビール缶だけで90億本強、加えてRTD缶もある」と書いた。
ガラスびんの市場規模が、いかに少なくなったかがわかる。
なお、新びん8億本とは別に、
リユースされるビールびんや一升びんなど、再利用びんが1億本強/年ある。)
「ガラスびんは重たいのでカーボンFPが大きい」
「ガラスびんは今のライフスタイルに合わない、缶やPETボトルが便利」
などといわれるのは、日本も欧米も同じであるが、
EUでは、リユースに着目して、ガラスびんを再評価しようとしている。
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EUでは「PPWR」という規則が出来ようとしている。
(Packaging and Packaging Waste Regulation、包装・包装廃棄物規則)
今年(2024年)1~2月の新聞で、
「日本酒がEU で禁輸の危機、2030年以降びんの再利用義務化の影響で」
と報道されて業界で大きな話題になり、
その後 3月の新聞報道で、
「ワインやウイスキーとともに、日本酒も再利用義務除外で暫定合意」
と報じられ、業界関係者が胸をなでおろしたのをご存知の方は多いだろう。
「日本酒がEU で禁輸の危機」と報じられた原因の、
「2030年以降びんの再利用義務化」というのが、「PPWR」のことである。
この規則は、欧州理事会や欧州議会で暫定合意の状態にまでなっていて、
今後、EU理事会で承認されると、発効するそうだ。
(余談だが、EUには、「欧州理事会」(The European Council)と
「EU理事会」(The Council of EU)がある。ややこしい。。。)
PPWRの内容は:
■野菜・果物のプラ スチック包装の禁止
■野菜・果物に添付されるラベルは、堆肥化可能であること
■使い捨てコップ、スプーン、トレーの禁止(病院などは例外)
■ホテルの少量アメニティーシャンプーなどの使い捨て包材の禁止
■飲料・食品包装のリユース容器の利用率の目標設定
■プラチック包装材におけるリサイクル済みプラスチックの最低割合の設定
などなど。
2030年以降、多岐にわたる規制がかかる。
ガラスびん製品はPPWRのリユース要件を満たさないといけないが、
ワインとウイスキーのガラスびんは、当初から例外として除外された。
日本酒は例外扱いではなかったものが、
日本政府の働きかけで、ワインやウイスキーの仲間に入れてもらった格好。
(注:まだ決定ではないが、びんビールは、リユース要件を満たす必要があるので、
2030年以降、日本のクラフトビールは缶で輸出せざるを得ないかもしれない。)
「日本酒は再利用義務除外で暫定合意」のニュースでは、
「和牛の輸出が困難になるかも」と書いている報道もあった。
和牛の鮮度保持のための多層ラップフィルムが複合素材なので、
PPWRが求めるリサイクル要件を満たさない、という理由だそう。
実際のところ、どうなるのか、、、
PPWRには、
■市場に出回る包装は、その機能が保証される最小重量、
最小体積としなければならない(第10条)
という条文もある。
プレミアム商品の豪華な箱・重たいびん・デコラティブなキャップなどはどうなるのか、、、
2030年からの実務的・具体的な姿はまだわからないが、
規則は施行されることになる。
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最近、「PFAS」(ピーファス、有機フッ素化合物の総称)のことがよく報道される。
半導体、印刷インキ、消火剤、テフロン加工など幅広い分野で、
利用されている・利用されてきたが、
たくさんあるPFASのうち、いくつかのPFAS物質で、
発がん性があることが分かって、全体が問題視されている。
「各地の水道水から基準値以上のPFAS検出」として、
NHKテレビの「クローズアップ現代」でも特集番組になっていた。
EUのPPWRは、基本的には「量的削減」「プラスチック削減」が主眼の規則だが、
安全面から「化学品規制」についても盛り込まれていて、
PFASについては、条文の中で特にその名前を挙げて規制対象にしている。
アメリカでは州毎に独自の包装材料規制を行っているが、
PFAS禁止を採用する州がどんどん増えている。
清酒、ウイスキーなど、日本酒類の輸出に際して、
化学品規制適合の分析証明や、
BPA(ビスフェノールA)の意図的添加がないことが求められているが、
今後はPFASについても問われることになりそうに思う。
海外のパッケージ規制の動向の続きで、
「化学品規制」のことを、次回メルマガに書きます。
text = 喜多常夫
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さて、当社情報のご紹介です。
●▲■ ご紹介情報 その1 :KK ディヴィジョン ●▲■
サケびん口キャップ「AZK」がバイオ樹脂25%に
https://kitasangyo.com/pdf/package/closures/AZK-BIO.pdf
AZKの外栓は、従来は「バイオ樹脂10%」でしたが、
2024年5月から「バイオ樹脂25%」となりました。
バイオマスマークの認定も取得しています。
●▲■ ご紹介情報 その2 :ROOTSディヴィジョン ●▲■
ウイスキー蒸溜所に「樽型量り売り充填機」
https://kitasangyo.com/pdf/machine/byo-filler.pdf
スコッチウイスキーやバーボンウイスキーを訪問された方は、
「樽からの量り売り」を見られた方もいると思います。
蒸溜所直売のウイスキー・ジンの量り売り・びん詰め体験に。
●▲■ ご紹介情報 その3 :ROOTSディヴィジョン ●▲■
半自動びん詰機「サケ・フロイント」(流量計制御)
と「ウイスキー/ジン・フロイント」(重量計制御)
https://www.kitasangyo.com/pdf/machine/SF_WGF.pdf
4本ヘッドの半自動充てん機。
1.8L、720、700、500,300など、
180ml以上のあらゆる容量のびんに対応します。
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2002年5月の創刊以来のバックナンバーを収録しています。
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